(筆洗) イージス・アショアが必要なほど、わが国に安全保障上の危険が迫っているとは、どなたも信じまい。 - 東京新聞(2019年6月11日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019061102000138.html
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シュールレアリスム(超現実主義)のスペイン画家、サルバドル・ダリの昼寝は変わっている。スプーンを持って椅子に座る。椅子の近くには金属製のお皿を置いておく。
この状態で昼寝ができるというのにも感心するが、これ、実は昼寝というよりも一種の発想法だったらしい。うたた寝をすれば、スプーンが手から落ち、お皿に当たってガシャーン。目を覚ますやいなや、わずか数秒の居眠りの間に見た夢を大急ぎで描くのだそうだ。不思議な作品を描けた秘けつか。
こっちの居眠りの職員の足元にもスプーンを投げてガシャーンと音を立てたくなる。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を巡る秋田市での住民説明会で防衛省職員が居眠りをしていたそうである。
つい居眠りというのは誰にもあろうが、住民が配備を心配し、不満の声を上げている説明会のその席で堂々と舟をこぐとはあまりにも無神経で、緊張感がなかろう。
住民説明会を昼寝でもして時間を費やせば終わる単なる手続きと見くびってはいなかったか。投げたくなるのはスプーンではなく、もはや、さじの方だろう。
配備を巡る調査報告書には事実と異なるデータも入っていた。データはいいかげん、職員はコックリ。ぼんやりした防衛省を見ればイージス・アショアが必要なほど、わが国に安全保障上の危険が迫っているとは、どなたも信じまい。