森友国有地訴訟 不信感を増幅する判決だ - 信濃毎日新聞(2019年6月1日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190601/KT190531ETI090010000.php
http://archive.today/2019.06.02-014323/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190601/KT190531ETI090010000.php

これでは問題の本質は何も分からない。形式的な判決だ。
学校法人「森友学園」に対する国有地売却問題で、売却額を当初非開示とした国の処分の違法性が問われた訴訟である。一連の問題が発覚するきっかけとなった重要な裁判だ。
大阪地裁は違法性を認め、提訴した大阪市議に3万3千円を支払うよう国に命じた。
判決は、2013年度から16年度までに売却された国有地104件のうち、契約金額が非公表だった事例は、森友学園の案件以外にはないことを指摘した。その上で「近畿財務局は、情報公開法上の非開示情報に当たらないと容易に判断できた」としている。
国有地の売却では契約金額は原則公表されており、非開示情報に該当しないのは当初から明白だったといえる。
問題は、非開示とした動機や背景に踏み込んでいないことだ。
本質は、国有地が土地評価額の9億5600万円から約8億円も値引きされた経緯である。
安倍晋三首相の妻が一時、学園が開校を予定していた小学校の名誉校長に就いていた。異例の決定の背景に政権への「忖度(そんたく)」があったのかどうか。値引きが妥当な判断だったのかが問われている。
それなのに、判決は違法の根拠を、近畿財務局が「職務上の注意義務を尽くさず、漫然と非開示の判断をした」ことに求めた。
国は森友学園に対し、売却を前提にした定期借地契約を結んだり、分割払いを認めたりと、異例の対応を重ねた。この理由は不透明のままだ。財務省による決裁文書の改ざんでは「本件の特殊性」などの文言も削除されていた。
8億円は地中に埋まったごみの撤去費用として差し引かれた。その根拠も釈然としない。
判決は埋設ごみなどを記載した契約条項は「公になれば保護者に心理的嫌悪感を与える」などとして、非開示は適法と判断した。
8億円もの値引きをしながら、その根拠を開示しないことがなぜ適法なのか。背景や理由を精査せずに違法性の有無を判断するのは納得できない。国有地の売却は、国民の共有財産を扱う行為だ。その重要性を過小評価した判決と言わざるを得ない。
原告側は「政権に忖度した判決だ」と批判している。一連の問題は、発覚から2年以上が経過しても財務省などから明確な説明がなされていない。判決は国民の不信感を増幅する。政府は改めて問題の経緯を説明するべきだ。