森友学園捜査 検察が試される時だ - 東京新聞(2017年6月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017062102000138.html
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国政を揺るがす森友学園の問題を巡り、大阪地検強制捜査に着手した。首相との関係が臆測を呼んだ特異な学校法人が舞台である。“忖度(そんたく)”せず疑惑の核心に迫るか。検察が試される捜査だ。
家宅捜索を受けた森友学園籠池泰典前理事長は二十日朝、さっそく報道陣の取材に応じ「逮捕されるだろうと認識している」と語り、「国策捜査だ」と批判した。
国有地がひそかに格安売却されていたという問題の発覚から四カ月。政府が情報開示に背を向け続ける中、「キャラが立つ」とも言われる籠池氏の言動が注目を集めてきた。入り乱れる情報の真偽を精査し、国民の疑問に答えるべく捜査を尽くすことが検察の使命である。
今回の容疑は、学園が運営する幼稚園への大阪府補助金約六千二百万円をだましとったとする詐欺と、小学校新設を巡り国の補助金約五千六百万円を不正受給したとする補助金適正化法違反。特捜部は、押収した資料を解析するとともに籠池氏からも事情聴取し、まず、この詐欺容疑などの解明を進めることになる。
一方、国民が最も関心を寄せているのは、国有地の格安売却とその不透明な交渉過程である。
国有地は、言うまでもなく国民の財産である。森友学園は、小学校用地として国有地を借りる契約を結んだ後、地中から大量のごみが見つかったことを機に買い取りに変更。ごみ撤去費として八億円超を差し引いた一億三千四百万円で払い下げを受けた。
異例の手続きを重ねた近畿財務局は当初、売却価格を非公表としていた。財務省は一連の交渉記録を既に破棄したとしている。
学園は当初「安倍晋三記念小学校」の触れ込みで寄付を募り、その名誉校長を安倍首相の妻昭恵氏が一時務めてもいる。首相との関係が、国有地売却に影響を与えはしなかったか。
首相は衆院予算委で「私や妻が関わっていれば首相も国会議員も辞める」と述べたが、国会での追及に対し、とても政府が説明責任を果たしたとはいえまい。行政の忖度は、ありやなしや。疑問は一向に解消されていない。
補助金不正も、事実とすれば無論、許される話ではない。だからといって、捜査が“籠池たたき”だけに傾くようであれば、国民も「国策捜査」と見抜いて検察への失望を重ねるばかりだろう。疑惑の核心に迫る気概はあるか。検察の姿勢が問われることになる。