https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190522/KT190521ETI090005000.php
http://archive.today/2019.05.23-001314/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190522/KT190521ETI090005000.php
米国の社会派映画には作り手の骨太のメッセージがある。公開中の「記者たち 衝撃と畏怖の真実」は何か。ロブ・ライナー監督が語っている。真実を知る自由と政府に影響を受けない報道をどう手に入れるかというメッセージだ、と
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米中枢同時テロを受け、ブッシュ政権は2003年、イラク侵攻に突き進もうとしていた。中堅新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局の記者たちはその情報をつかみ、イラクが大量破壊兵器を保有しているとの開戦理由にはうそがあると疑っていた
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ニューヨーク・タイムズなど大手メディアは根拠の乏しい核や化学兵器疑惑を相次いで報道した。世論は愛国心に染まり開戦を支持する。ナイト・リッダーの記者は孤立感を深めながらも取材を続け、イラクの情報が政権の意図に合うようにゆがめられたとの証言にたどり着く…
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トランプ政権が「イラン脅威論」をあおっている。声高に訴えているのがボルトン大統領補佐官だ。イラク侵攻の際、国務次官の職にあり一翼を担った強硬派である。情報戦に流されれば、イラク戦争の二の舞いになりかねない。メディアにも正念場だ
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「記者たち」のサブタイトル「衝撃と畏怖」はイラク侵攻の作戦名だ。大仰な表現の裏に真実は隠されている。ライナー監督自らふんした支局長が記者を激励した言葉が印象深い。「政府が何か言ったら、必ずこう問え。それは真実かと」。日本でも繰り返さなければならない問いである。