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米軍基地の実態を覆い隠す悪法が成立した。在日米軍基地や自衛隊施設の上空に小型無人機ドローンを飛行させることを原則として禁止する改正ドローン規制法が17日の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決されたのである。
規制されるのは、防衛相が指定する施設・敷地と周囲おおむね300メートルの区域の上空だ。飛行させるには施設管理者の同意が必要になる。違反すれば1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがある。警察官や自衛官は、違反者のドローンを捕獲したり、破壊したりできる。
何よりも問題なのは、テロ防止の名の下に、国民の知る権利が大きく侵害される点だ。ドローンによる空撮ができなくなれば、報道機関の取材活動は著しく制限される。その結果、基地内や基地周辺で起きていることがベールに包まれ、実情を把握することが困難になるのである。
改正法によって最も大きな影響を受けるのは、全国の米軍専用施設面積の70%を押し付けられ、基地と隣り合わせの生活を余儀なくされている沖縄県民だ。
飛行禁止の範囲は今後、政府が指定することになっているが、32カ所の米軍施設周辺に加え、キャンプ・シュワブを含む27カ所の提供水域、20カ所の提供空域まで対象になる可能性がある。
指定を守って飛行させた場合でも、施設管理者の恣意(しい)的な判断によって民間のドローンが排除されることが日常的に起こり得る。
基地から派生するさまざまな問題が見えにくくなり、住民はこれまで以上に蚊帳の外に置かれる。災害発生時に、被害の迅速な把握が困難になることも懸念される。
米国はかねて、基地周辺でのドローン使用を禁止するよう日本側に要請してきた。法改正で、これに応えた格好だ。国民の知る権利よりも米軍の都合を優先する態度と言わざるを得ない。
防衛省は、報道の自由との関係を含め適切に同意の可否を判断するよう米側に求めたというが、アリバイづくりにしか映らない。
報道目的の場合は飛行を原則として認めるとした立憲民主党提出の修正案が与党などの反対で否決されたのはその表れだ。与党の動きは政府の意を受けたものと言える。
米軍基地や周辺で重大事故が起きたとき、報道機関がドローンを使って上空から撮影することに米軍は同意するだろうか。むしろ、隠す方向に動くのではないか。
今回の法改正を機に、米軍による傍若無人な基地運用がますますエスカレートすることが危惧される。日米両政府による米軍基地の「隠蔽(いんぺい)工作」という側面は否めない。
政府は、軍施設周辺の撮影などを禁じる法律があった戦前のような体制に逆戻りしたいのか。国民の権利を米国に譲り渡すかのような姿勢は断じて容認できない。