「六つのみたま ここにしづまる」… - 毎日新聞(2019年5月5日)

https://mainichi.jp/articles/20190505/ddm/001/070/130000c
http://archive.today/2019.05.05-005035/https://mainichi.jp/articles/20190505/ddm/001/070/130000c

「六つのみたま ここにしづまる」。横浜市青葉区と東京都町田市に広がる「こどもの国」近くに石碑が建つ。戦時下の学徒動員中に事故で死亡した横浜二中(現横浜翠嵐高)の生徒6人の慰霊碑だ。
上皇さまご夫妻の結婚を記念して1965年5月5日に開園した「こどもの国」は戦前、陸軍部隊が駐屯し、戦争末期には中学や女学校の生徒も弾薬組み立て作業などに従事した場所だ。戦後は米軍の弾薬庫となり、今もその跡が残る。
牧場などが整備された「こどもの国」は連休中、こいのぼりが泳ぎ、多くの家族連れでにぎわう人気スポットだ。開園以来の入場者は4500万人を超えた。ご夫妻はもちろん、天皇陛下秋篠宮さまも幼少期からたびたび訪れてきた。
ご自身の戦争体験を踏まえ、歴史を後世に伝える重要さを訴えてこられた上皇さまだ。園にまつわる歴史もご存じだろう。園のホームページには「『子ども』『自然』『戦争の記憶』を大事にするという価値観を、皇室とこどもの国は共有しています」とある。
今年は国連の児童権利宣言採択から60年。宣言は2度の大戦で子どもに最悪の環境をもたらしたことを念頭に「人類は児童に対し、最善のものを与える義務を負う」と明記した。
平成は日本にとって戦争のない時代だったが、アフリカでは95年からの20年間に武力紛争の影響で5歳未満の乳幼児500万人が死亡したという推計もある。令和の新時代。世界の子どもたちに「最善」がもたらされることを祈りたい。