地方選の低調 再統一検討してみては - 朝日新聞(2019年5月5日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S14002900.html
http://archive.today/2019.05.05-005839/https://www.asahi.com/articles/DA3S14002900.html

先月の統一地方選であらわになったのは、変わらぬ低投票率と無投票当選の増加である。
投票率アップやなり手不足の解消には自治体の努力と工夫が欠かせないが、それだけでは限界もある。すべての自治体の首長・議会選挙を一斉に行う。今回は27%だった統一率を再び100%に戻すといった抜本的な改革を考える時ではないか。
前半の11道府県知事選の平均投票率は47・72%で前回よりやや持ち直した。一方、41の道府県議選をはじめ、後半の市長選、市議選は50%を割り、多くの選挙で過去最低を記録した。1950年代をピークに右肩下がりの傾向が続いている。
投票率の根本的な原因は、地方自治の活力の低下だろう。政府主導のお仕着せではなく、地域の実情にあった政策を打ち出し、賛否や成果を問う。こうなれば住民の関心はおのずと高まるはずだ。府知事と市長を入れ替えて「クロス選」に打って出た手法は決して是認できないが、大阪で「都構想」への注目が投票率を押し上げたのは間違いないだろう。
鳥取県知事や総務相を務めた片山善博早大大学院教授は、自治の再活性化に加え、すべての選挙を11月にずらして再統一し、4年に1度に固定することを提唱している。
年度の始まりの4月に当選した知事や市町村長は、前任者がつくった予算での自治体運営を強いられる。首長選がある年は暫定的な当初予算が組まれるとはいえ、その後に新首長が使える財源はごくわずかというケースもある。自らの経験から、11月選挙なら翌年度の予算案づくりに最初からかかわることができ、メリットは大きいという。
再統一すれば有権者の関心は高まり、政党が財政や分権など地方がらみの政策に本腰を入れる効果も期待できる。
首長選を4年に1度に固定し、任期途中の辞職などの際は選挙時にあらかじめ指定しておいた副知事や副市長らが残り任期を務めるようにすれば、突然の選挙を避けることもできる。準備不足の候補者による短期決戦では、政策は二の次で知名度頼みの選挙になりやすい。時期を固定すれば、各候補者がじっくり練った政策を競い合って選挙の質を高めることができるし、今回の大阪のように現職側が有利な時に選挙を設定できる不公平も防げる。
片山氏は任期を少しずつ延長して四半世紀ぐらいかけて11月に集約してはと提案している。法改正が必要だが、合意が得られれば、もう少し短い期間での集約も可能だろう。大胆な提案だが、手をこまねいてばかりいるよりは検討するに値する。