(県民投票「実施せず」)住民の投票権奪うのか - 沖縄タイムス(2018年12月20日)

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新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票について、宮古島市の下地敏彦市長が実施しない考えを明らかにした。
「議会の意思を尊重する」というのが理由だ。
宮古島市議会は18日、県民投票に関する部分を削除した予算案を賛成多数で可決。下地市長が議決のやり直しを求めて「再議」となったが、同様に削除した修正案が賛成多数で可決された。その後、市長は不実施を表明した。
県民投票は学生や弁護士ら市民有志が9万2848筆の署名を集め、県に条例制定を請求したものだ。署名は必要数である有権者の50分の1を大きく上回り、宮古島市でも有権者の1割近い4184筆が集まった。
下地市長には寄せられた署名の重さと、条例や地方自治法に定める執行義務を再確認してもらいたい。
「二元代表制」をとる地方自治体で、選挙によって選ばれた市長が、直接的に「政治責任」を負うのは住民だからだ。
県議会で制定された県民投票条例13条は、投票資格者名簿の調製や投開票の実施を「市町村が処理すること」と定めている。
地方自治法177条は、市町村の義務的経費を議会が否決した際、首長は再議に付し、再び否決された場合は、自ら予算を計上し「支出することができる」と規定している。
住民の基本権である投票権が議会によって奪われることになれば、地方自治は大きく揺らぐ。
下地市長には再考を求めたい。

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市民の「意思表示する権利」を奪うとの指摘に対し、下地市長は「大多数の議員が反対したということは、市民の意見がそこに集約されている」と持論を展開した。論理に飛躍と決めつけがあり、合点できない。
辺野古移設に反対する知事の考え方は県民が広く支持している」とも語ったが、民意がないがしろにされているからこそ、県民投票が必要なのである。
さらに「国の専権事項を侵すような形になる」との見解も明らかにした。基地建設など安全保障に関わる問題に、自治体や住民はどうこう言うべきではないとの考えなのだろうか。その発想もおかしい。
自治体が住民の生活を守る立場から、国に過重負担の軽減と公平・公正な扱いを求めるのは当たり前のこと。
全国の米軍専用施設の約7割が沖縄に集中しているだけになおさらである。

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県民投票を巡っては、石垣市の中山義隆市長も議会で予算が否決された場合、実施しないことを明言している。宜野湾市議会もすでに反対の意見書を可決しており、実施が危ぶまれている。
自民党の国会議員や県知事は「辺野古反対」の選挙公約を当選後に破り、名護市や宜野湾市の市長は選挙で辺野古の移設の是非を語らなかった。
その上今度は自治体の首長が県民投票を拒否する。
本当にそれでいいのだろうか。