<金口木舌>忙しすぎる教師たち - 琉球新報(2020年1月4日)

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将棋のプロ棋士の高校生が主人公の漫画「3月のライオン」は、孤独な主人公がさまざまな人たちとの出会いを通して成長していく物語。主人公は事故で家族を失い、将棋を生きる支えにしている

▼出色なのは高校の担任だ。昼休みに独りで弁当を食べる主人公の傍らで雑談する。不登校気味だった主人公は、教師の支えもあり学校に楽しさを見いだす
▼教員が倒れてしまうのではと心配になる結果が出た。琉球新報が県内全41市町村の教育委員会を対象に教員の働き方を尋ねた調査だ。38市町村から回答があり、小中学校で「過労死ライン」とされる月80時間を超える残業をしたのは18年度、少なくとも延べ2329人に上った
▼残業の理由に「授業準備」「事務作業や報告書作成」「学校行事」などがある。部活動の見守りに追われ、疲弊する教員の姿も浮かび上がった
▼残業の多い背景に、例えば小学校なら道徳、英語など教科が増えても教員定数が改善されない構造的な要因がある。超勤の多さは高校も似ている。県教委が全県立高校などを対象にした調査で、残業が月80時間を超えた教員は3078人もいた
ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんが科学に興味を抱いたきっかけは一冊の本。小学生の時に担任の先生から紹介された。優れた教師との出会いは子どもの人生を変える。多忙化の解消は待ったなしだ。