[石垣陸自基地着手]住民理解にはほど遠い - 沖縄タイムス(2019年3月3日)

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住民へ丁寧に説明することなく、環境影響評価(アセスメント)を求める声も顧みない。合意形成にはほど遠い強行だ。
石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備に向け、沖縄防衛局は1日、駐屯地の工事に着手した。予定地内に土のうを置く作業などを進めた後、早ければ週明け以降、本格的な造成工事に入る。
防衛省は南西地域の防衛態勢の充実を図るとし、石垣島に500~600人規模の警備部隊やミサイル部隊を配備する方針である。駐屯地には隊庁舎のほか車両整備場、倉庫、弾薬庫などの建設が計画されている。
全46ヘクタールのうち、今回、造成工事を行うのは土地取得済みの旧ゴルフ場13ヘクタールの一部で、進入路部分に当たる0・5ヘクタール。現時点で予定地の約半分を占める市有地は未取得だ。
このタイミングで、なぜ工事着手なのか。
指摘されるのは、調査などで工事が遅れるのを嫌っての「アセス逃れ」である。年度内に着工すれば、20ヘクタール以上の土地造成を伴う事業が対象となる県の改正アセス条例の適用外となるからだ。
予定地は島民が飲み水や農業用水として使う水源の宮良川にほど近い。大雨が降ると雨水は川に流れ込み下流へと運ばれる。
県内では米軍基地周辺の河川から何度も高濃度の有機フッ素化合物が検出されており、予定されている車両整備場や弾薬庫から流れ出る水の安全が心配されている。
住民の不安を拭い去るためにも、工事より先にアセス手続きを進めるべきだ。

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自衛隊配備計画に対し於茂登、開南、川原、嵩田の近隣4地区は反対を決議している。
先月末、「話し合いの第一歩」とし防衛省の担当者と面談したが、カンムリワシなど希少動植物や水源への影響、合意形成の在り方などについて納得のいく答えは得られなかった。
そして住民らが再度話し合いを求めた直後の工事着手である。時間をかけた対応が必要だというのに、合意形成作業をすっ飛ばすという乱暴なやり方だ。
石垣市の中山義隆市長は「国防や安全保障は国の専権事項」として配備を容認している。
自治体には市民の生命や健康、安全を守る責務があるというのに、「国の専権事項」だからと思考停止に陥るのは一種の逃げである。本来なら「アセス逃れ」とも受け取れる国の姿勢をただしていくのが首長の役割ではないか。

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辺野古新基地建設を巡る県民投票で、投票者の7割超が「反対」の意思を示したにもかかわらず、政府は工事を止めることなく、県が求める新たな協議の場の設置にも耳を貸そうとしない。
「説明責任」と「合意形成」という最低限のルールさえ守られず、沖縄の北では米軍基地、南では自衛隊駐屯地工事が強行されている。
米軍と自衛隊の一体化が急速に進む中での基地建設は、南西諸島の「軍事要塞(ようさい)化」というほかない。