辺野古「反対」 民意の黙殺は許されない - 信濃毎日新聞(2019年2月25日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190225/KT190222ETI090002000.php
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米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡る沖縄の県民投票は埋め立てに「反対」が過半数を占めた。
法的拘束力がないからといって政府は黙殺してはならない。
「賛成」「反対」「どちらでもない」のいずれかを選ぶ方法で行われた。得票の最も多かった選択肢が投票資格者の4分の1に達したら、知事は結果を尊重しなければならず、首相や米大統領に通知することになっている。
当初、賛否の二つだった選択肢は、一部自治体の不参加表明を受け「どちらでもない」が加えられた。民意をつかみにくい結果も心配されたものの、終わってみれば明快である。
当然と言えば当然だ。2度の知事選をはじめ、各種選挙で反対の意思表示が繰り返されてきた。とはいえ、辺野古の一点に絞って示された意味は重い。
県民投票に対し、政権側は冷ややかに対応してきた。自民党県連は、移設を巡る議論が盛り上がらないよう静観し、自主投票で臨んでいる。党本部が容認、県本部が反対と「ねじれ」を抱える公明党も自主投票とした。
政府は、結果にかかわらず移設を進める方針だ。告示日の記者会見で菅義偉官房長官は「地方自治体が行うものであり、政府としてはコメントを差し控えたい」と突き放していた。「問題の原点は普天間の危険除去と返還だ」と従来の主張を繰り返している。
埋め立て予定海域には軟弱地盤が存在する。改良工事により工費が膨らみ、工期も大幅に延びることが見込まれる。今回の県民投票で重要な判断材料だったのに、政府から詳しい説明はない。
具体的な工期や工事内容について岩屋毅防衛相は22日の記者会見でも「今後、詳細な設計を行って明らかにしていく」と述べるにとどまった。肝心な点を曖昧にしたまま普天間の早期返還を主張しても、説得力を持たない。
政府は投票結果を正面から受け止め、県と話し合うべきだ。沖縄の意向を踏まえ、米国側と交渉するのが本来の姿である。埋め立て工事を中止し、より多くの県民が納得できる基地負担軽減策を探ることが求められる。
反対意見に耳を傾けず、一方的に国の方針を押し付ける―。そんなやり方を許せば、どの自治体でも同じことが起こり得る。沖縄にとどまらず、民主主義や地方自治の在り方に関わる問題である。国民全体で向き合い、政府に転換を迫っていきたい。