http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019022502000137.html
重ねて沖縄の揺るぎない民意が示された。民主主義と地方自治を守るのなら政府は県民投票結果を尊重し、工事を中止した上で県民との対話に臨むべきだ。国民全体で沖縄の選択を重く受け止めたい。
県民投票結果に法的拘束力はない。だが、今後の事業展開に影響を与えないわけがない。
政府は、結果によらず米軍普天間飛行場の移設を名目にした新基地建設を進める考えだ。判断の根底には「一九九九年に知事と名護市長の受け入れ同意を得て辺野古移設を閣議決定した」(菅義偉官房長官)との認識がある。
しかし、当時の稲嶺恵一知事と岸本建男市長が表明した十五年の使用期限など条件付き容認案は二〇〇六年、日米が沿岸埋め立てによる恒久的な基地建設で合意し破棄された。一三年に仲井真弘多知事が下した埋め立て承認も、選挙を経ての決定ではなかった。
その後二回の知事選で移設反対を掲げた知事が就任。今回は埋め立ての賛否に絞って問い、五割超の投票率で玉城デニー知事の獲得票を上回る反対票が投じられた。地元同意はもはや存在し得ない。
技術的には、埋め立て海域に横たわる軟弱地盤の問題も大きい。
約七万七千本もの砂杭(すなぐい)を打つ地盤改良は前例がない難工事が予想される。環境への影響も甚大であり、民意を代表する玉城氏は設計変更申請を認めないだろう。
法廷闘争に持ち込んだとて政府が勝訴するとは限らない。翁長前県政時代の国と県との裁判は国側勝訴が確定したが、知事選などで示された民意を巡る裁判所の判断は賛否どちらともとれないというものだった。今度は状況が違う。
民主主義国家としていま、政府がとるべきは、工事を棚上げし一票一票に託された県民の声に耳を傾けることだ。現計画にこだわるのなら納得してもらうまで必要性を説く。できなければ白紙に戻し、米側との議論をやり直す。
今回、「賛成」「どちらでもない」に集まった票には普天間の危険性除去に対する思いがあろう。無論、「反対」を選んだ県民もその願いは同じはず。普天間返還はこの際、辺野古の問題と切り離して解決すべきだ。
国策なら何でも地方は受忍せざるを得ないのか。選挙による民意表明が機能しない場合、住民は何ができるのか。混迷の末に行われた沖縄県民投票は、国民にも重い問いを突きつけた。私たちは政府対応を注視し、民意尊重の声を示してゆきたい。