https://www.tokyo-np.co.jp/article/276170
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を日本側に返還するため、名護市辺野古沿岸部を埋め立てて代替施設を建設することを巡る裁判で、最高裁が県の上告を退けました。
東京新聞は7日の社説「辺野古判決 『沖縄の自治』はどこへ」で、最高裁判決について「沖縄の民意を切り捨てる司法判断だ。政府は『辺野古ノー』の地元の声を聞かぬまま、工事を強行してはならない」と指摘しました。
外交や安全保障は国の仕事であり、地方自治体は従うべきだとして、社説で玉城デニー県知事に協力するよう求めた在京紙もありました。
本紙は国の仕事であることは十分に理解しつつ、地方自治の視点をより大切にしたいと考えます。今回の社説の主張も、そうした視点や論説室内の議論に基づいています。
この問題がいまだ解決に至っていない要因は、国が地元の反対を押し切って、辺野古沿岸部の埋め立て工事を強行したことです。
2019年の県民投票では7割以上が辺野古埋め立てに反対し、昨年の知事選でも辺野古の新基地建設に反対する玉城氏が再選されました。
安全保障がいくら国の仕事だとしても、こうした地元の反対を押し切って強引に進めていいわけはありません。
特に沖縄では、激しい地上戦で多くの県民が犠牲になりました。県内にはいまだ多くの在日米軍基地が残り、事故や騒音、事件などの基地負担を強いられています。
危険な普天間飛行場をなくすことは喫緊の課題でも、同じ県内に移設しても基地負担は減りませんし、米軍の機能が強化されれば攻撃される可能性が高まるかもしれないとの不安が県民に募ります。
国はこうした県民の思いにどれだけ寄り添ってきたというのか。法律は国と地方自治体を対等な立場としているのに、国が決めたことには従えというのでは自治を軽視しているとしか思えません。
国は埋め立て工事をいったん中止し、県民の思いと誠実に向き合うべきです。それが地方自治を大切にすることにもなるはずです。 (と)