<税を追う>軟弱地盤 最深90メートル 辺野古 杭打ち70メートル限界 - 東京新聞(2019年2月20日)

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沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設で、埋め立て海域の軟弱地盤が最も深いところで海面から九十メートルにまで達していることが、防衛省の報告書で分かった。世界でも深さ九十メートルまで地盤改良した実績はない。防衛省は砂の杭(くい)を最大七十メートル程度まで打ち込む改良工事により、基地は建設可能としている。専門家は「軟弱地盤が残れば、完成後も長期にわたって地盤沈下が続く恐れがある」と指摘。沈下防止のため多額の費用が継続的に生じる可能性がある。 (中沢誠)
軟弱地盤のデータは、沖縄防衛局が業者に委託し、地盤改良工事を検討した報告書に記されていた。報告書は今年一月にまとまった。
軟弱地盤が海面から九十メートルにまで達する地点は、「ケーソン」と呼ばれる巨大なコンクリートの箱で埋め立て区域を仕切る護岸部分の海域。水深三十メートルの海底に約六十メートルの厚さの軟弱地盤が存在していた。
防衛局は、地盤改良のため砂の杭を地中に打って地盤を固める工法を検討している。工法自体は一般的だが、防衛省によると、海面から杭を打ち込む深さについて「国内で六十五メートル、海外では七十メートル」までしか実績がないという。報告書でも、現有する作業船の能力から、杭打ちの深さを最大七十メートル程度としている。
軟弱地盤が海面から九十メートルの深さまで広がっている地点では、固い地盤まで杭が届かない。それでも報告書は、地盤沈下は工事中で三メートル超、運用後二十年間で約四十センチと見込み、「十分対応が可能」と結論付けている。
防衛局は、地盤改良のために海上から作業船で打ち込む杭の数を六万三千本と想定している。
この他に、防衛省が陸上からも一万三千本の杭を打つ工法を検討していることが、報告書から新たに判明した。改良が必要とみられる範囲が、作業船の入れない浅瀬にまで及んでいたためだ。
浅瀬では、いったん土砂で埋め立てた後、陸上からパイプを打ち込み、砂などを流し込んで砂杭を造り、杭で地中の水分を抜いて地盤を固める。県は地盤改良の工費について、四万本の砂杭を海面から七十メートルの深さまで打った場合、約五百億円と独自に試算している。
防衛省は総事業費を「三千五百億円以上」としているが、地盤改良費を見込んでおらず、工費がさらに膨らむのは必至だ。

◆埋め立ては可能
<沖縄防衛局報道室の話> ボーリング調査を踏まえて検討した結果、地盤改良工事を行えば埋め立ては可能と確認した。今後、地盤改良にかかる具体的な検討を行うが、現時点で確たることは言えない。

<日本大理工学部の鎌尾彰司准教授(地盤工学)の話> 海面から90メートルの深さを地盤改良することは、施工機械がなく不可能だろう。砂杭が届かず20メートル分が未改良のままとなれば、長期間にわたって沈下する恐れがある。将来の沈下量の予測も難しく、完成後も沈下対策の費用が大きくかさむ恐れもある。