[大弦小弦]顔に出血の痕が残る男性が静かに語った。「私はヘイトクライムの犠牲になった」… - 沖縄タイムス(2019年2月18日)

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顔に出血の痕が残る男性が静かに語った。「私はヘイトクライムの犠牲になった」。ラグビーの英西部ウェールズ代表で活躍した名選手、ガレス・トーマスさん(44)。ゲイであることを公表していて、それを理由に襲撃された

▼昨年11月の事件翌日、「前向きなメッセージを」と語る動画をネット投稿した。「私たちを傷つけようとする人は多い。でも残念だろうけど、傷を癒やすのを助けてくれる人はもっと多い」

▼警察に「修復的司法」適用を申し出て、受け入れられたと感謝した。英紙報道によると、加害者の少年は謝罪した

▼加害者が被害者と顔を合わせ、与えた傷を知る。被害者は罪の背景を知る。対話と理解を探る手法。欧米で生まれ、日本でも導入の動きがある

石垣市で起きたネット上のヘイトスピーチ事件は名誉毀損(きそん)罪で裁かれたが、罰金10万円。同種事件は常に傷が深く、罰は軽い。加害者が反発したまま終わる恐れもある。根絶には、修復的司法も役割を果たせそうだ

▼被害者の勇気と加害者の真摯(しんし)な姿勢には先例がある。読谷村チビチリガマ遺族会は、戦争遺跡を荒らした少年たちと時間をかけて向き合った。戦争も、壊した千羽鶴の意味も知らなかった少年は「自分で作って持って行った時、ああこういう大切な場所なんだと気付かされた」と話している。(阿部岳)