<金口木舌>改憲と強権化 - 琉球新報(2019年2月1日)

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南米ベネズエラでフアン・グアイド国会議長が暫定大統領への就任を宣言した。反米左翼のマドゥロ大統領による独裁政治が続く同国は、主要な収入源である石油生産の落ち込みで財政難に陥った。社会主義的政策が行き詰まり食料・医薬品不足やハイパーインフレが深刻化している

マドゥロ氏は1999年以降に憲法改正などを通し、強権体制を築いたウゴ・チャベス前大統領の後継者だ。チャベス氏は大統領選挙で貧困層から圧倒的な支持を得て当選した。だが強大な権力を手にして進めた改革はマドゥロ氏の下で頓挫した
▼選挙によって民主的に選ばれた指導者が、憲法を改正したり骨抜きにしたりして強大な権力を手にする事例は近年も相次ぐ
▼野党弾圧や言論統制が問題化しているトルコのエルドアン大統領は、改憲によって権力強化を進めた。中央アジアキルギスなどでも指導者に権力を集中する改憲案が取りざたされている
▼権力を縛り、暴走を防ぐのが憲法だ。権力側から改憲を言い出すとき、その底意に注意を払う必要がある。自民党改憲草案の柱の一つが緊急時に国民の権利を制限できる緊急事態条項だった
▼同条項は「人権や地方自治が制限され、乱用される危険性が高い」と多くの憲法研究者らが指摘している。国民の約1割が国外に脱出してしまったベネズエラの事例が示唆を与えている。