反戦平和を訴え続け 加藤剛さん死去 - 東京新聞(2018年7月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201807/CK2018071002000140.html
https://megalodon.jp/2018-0710-0854-37/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201807/CK2018071002000140.html

<評伝> 亡くなった加藤剛さんは反戦平和を訴え続けた俳優だった。その原点は、戦時中の体験にある。軍医だった義兄が戦死し、姉は適切な治療を受けることもなく病死した。
二十四歳でテレビドラマ初主演となった「人間の条件」では、戦時下の過酷な状況でも人間としての良心を貫こうとする青年を好演。メディアの取材に「『人間の条件』で、平和な世の中をつくり、戦争に反対することが、僕の俳優という仕事の基本になりました。以来、どの作品に出ても平和のために自分は何ができるかと考えてきました」と話した。
舞台では、ポーランドで孤児院を運営し、ナチス・ドイツ強制収容所で虐殺されたユダヤ人医師を描いた「コルチャック」をライフワークとした。
一九九五年に劇団ひまわりの舞台「コルチャック先生」で初めてこの役に取り組み、九七年、二〇〇一年に再演。〇六年と〇九年には俳優座で朗読劇「コルチャック」として上演した。
仕事以外でも、護憲を訴える「俳優座9条の会」の呼びかけ人となり、核兵器廃絶を求める国際的署名活動に参加するなど、活発に発言。学生時代に六〇年の安保改定を防げなかった苦い経験に触れ、改憲を進める現政権を批判し「戦争する国になっていくことを防げなかったら、いま以上に後悔すると思う」などと述べたこともあった。
各地の市民グループの集会などで、日本国憲法を「人類の到達した最高の英知」と評価。戦争を知らない若い世代に向け「テレビや映画、演劇を通して戦争の愚かさを知り、絶対にしちゃいけないと知ってもらいたい。私たちにはそういう作品をつくり、知らせていく義務がある」と強調していた。(浜口武司、藤浪繁雄)