住民は投票する権利を持っている 沖縄の県民投票、不透明な状況に - 沖縄タイムス(2019年1月6日)

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沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府は昨年12月、玉城デニー知事が工事中止を求める中、辺野古沖に初めてとなる土砂投入を強行した。1996年の米軍普天間飛行場の日米返還合意後の重大局面を迎えた。一方、今年2月24日には新基地建設に必要な埋め立ての賛否を問う県民投票が実施される。県民が示す「民意」と、その結果を受けて日米両政府がどう対応するのかが注目される。(政経部・伊集竜太郎、嘉良謙太朗、銘苅一哲)
全市町村の参加不透明
名護市辺野古の新基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票が2月24日、各市町村で投開票される。都道府県単位での住民投票は、1996年に沖縄で実施された「日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票」に次いで2例目となる。ただ、一部の市町村が投票事務に必要な補正予算案を否決しており、全県で実施されるか不透明な状況だ。
今回の県民投票は昨年10月31日に公布・施行された「辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票条例」に基づいて実施され、辺野古の埋め立てに対し「県民の意思を的確に反映させる」ことを目的としている。
県民投票を巡っては、一般市民らでつくる「『辺野古』県民投票の会」(元山仁士郎代表)が条例制定を直接請求するため5月23日から2カ月間、県内各地で署名を集めた。請求には約2万3千筆が必要だったが、有効署名数は4倍の9万2848筆に上った。
同会は9月5日に謝花喜一郎副知事に県民投票の条例制定を請求。条例案は県議会の米軍基地関係特別委員会での審議などを経て、10月26日の県議会の最終本会議で「賛成」「反対」の2択で問う与党案が賛成多数で可決された。
自民・公明が提案した賛成、反対のほか、「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えた4択案は否決された。
首長の判断次第で
県民投票条例の第13条では、投票資格者名簿の調製や投開票などの事務を「市町村が処理することとする」と定めており、昨年までに34市町村議会で投票事務に係る予算案を可決し、実施が決まった。
一方、宜野湾と宮古島の両市長は不参加を表明。予算案を否決または削除した7市町のうち、与那国町長は予算を執行する意向を示しているが、うるま、沖縄、糸満、石垣の4市は実施するかどうか明言していない。
地方自治法に基づき首長の判断で予算執行は可能だが、判断次第では実施されない可能性もある。

【Q&A】
Q 直接請求権って何?
地方公共団体の住民が地方の政治に直接参加できる権利のことだよ。日本は選挙で代表者を選び、代表者が国民に代わって政治を行う間接民主制度を取っているね。でも、憲法改正の際は、国会での審議後に国民投票が行われる決まりになっていて、一部直接民主制も取り入れられているよ」
Q 直接民主制と間接民主制はどっちがいいの?
「両方に長所・短所があるからどちらがいいと一概には言えないね。間接民主制の場合、代表者が多数決で物事を決めるよね。だから、どうしても採用されない意見が出てくるんだ。直接請求制度は住民の声を政治に伝えることが限られる間接民主制の欠陥を補完し、住民に直接意思表示する機会を与える仕組みといわれているよ」
Q 何を請求できるの?
「請求権には(1)条例の制定・改廃の請求(2)議会の解散請求(3)解職請求(4)監査請求があるんだ。請求する場合、(1)と(4)は有権者の50分の1、(2)と(3)は3分の1以上の署名が必要だよ。今回の県民投票は(1)の条例制定に当たるね」
Q 住民投票の結果は反映されるの?
「議会の解散や解職請求など法律を根拠とする住民投票には法的拘束力があるんだ。一方で、県民投票のように法律ではなく条例を根拠とした住民投票は、法的拘束力を持たないので、必ずしも結果が反映されるとはいえないね。県民投票条例でも賛成反対のいずれか多い数が投票資格者の総数の4分の1に達したとき、知事は結果を尊重しなければならない、と定めるにとどまっているよ」
「でも、条例は法律に基づいた手続きを経て制定され、住民は投票する権利を持っているんだ。沖縄の将来を決める大事な問題でもあるから、家族や親戚、友人たちとも話し合って、1票を投じてほしいね」