(県民投票 全県実施へ) 与野党の歩み寄り評価 - 沖縄タイムス(2019年1月25日)

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名護市辺野古の新基地建設の賛否を問う県民投票を巡り、県議会の全会派が、選択肢を賛否の2択から「どちらでもない」を加えた3択とすることで合意した。選択肢が2択であることや、県議会が全会一致でなかったことなどを理由に不参加を表明していた5市長の、参加への条件が整った。県民投票が全県で実施できる見通しとなった。
3択は公明党県本が折衷案として提案。当初2択を固持していた与党内の合意形成に、新里米吉議長が奔走した。玉城デニー知事が全会一致を条件に3択の検討を掲げたことも前進につながった。
各会派の調整は難航し代表者会議は夜までもつれ込んだ。自民党県連が独自の3択案を提案するなど一時決裂の様相も呈したが、最終的に取り下げた。理由について照屋守之会長は「与党が苦渋の選択をし、私どもも苦渋の選択をして全県民が投票できる態勢をつくろうと決断した」と述べている。
全会一致の環境が整ったことから、玉城知事は25日、選択肢を3択とする条例改正案を県議会に提出する。県内の全ての有権者投票権を確保する、という大義に向けた与野党の歩み寄りを評価する。
もともと県民投票条例は、新基地建設の賛否を2択で問う内容でいったん県議会で可決された。議会制民主主義の仕組みをとる社会において、この事実は重い。
それでもなお、与野党が改正案に向けテーブルについた背景には、投票を巡って有権者が分断されることを回避したいという思いがあったのではないか。民主主義の根幹である投票権を守った県議や県の英断を歓迎したい。

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県民投票をはじめとする住民投票は、県や自治体の住民が、特定の事項について直接意思表示するために行われる。立候補者が掲げる複数の政策を比較する選挙と異なり、明確な是非や枠組みを問うことが求められている。
しかし今回の県民投票では5市議会が県民投票予算案を否決。5市長が議会の判断を尊重する形で不参加を表明した。同じ県下で投票できる自治体とできない自治体が生じることとなり、全県実施が危ぶまれていた。
これに対し、県民投票実施について約10万筆の請願署名を集めた「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さんが、全県実施を求めハンガーストライキを決行。5市では住民たちが、不参加表明した市長に抗議する集会を次々開くなど反発が広がっていた。

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3択案については5市長も前向きな意向を示している。今後、県や県議会は、不参加を表明した5市の確実な実施の意向確認を急ぐとともに、2択で予算案を可決した36市町村や、元山さんをはじめとする県民への説明を尽くしてほしい。
各市町村は2月24日の投開票日に向け準備を急ぐ。なかでも5市は、投票準備が間に合うかどうかが焦点となる。一部、投開票日を延期する可能性も出ているが確実に実施してほしい。そして有権者である私たち一人一人は自らの意思を表明したい。