生活、仕事、勉強チームで支援 入管難民法改正 都内の特養では - 東京新聞(2018年12月25日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201812/CK2018122502000167.html
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外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法が成立した。政府は人手不足が深刻化する介護現場で、五年間で最大六万人の受け入れを見込む。外国人は日本の介護を支える存在になるのか。十年以上前に受け入れを始めた東京都内の特別養護老人ホームの取り組みを取材した。 (五十住和樹)

「晩ご飯は何がいい?」

「お肉」

女性入所者(77)とのこんなやりとりの後、フィリピン人介護福祉士モンティシリヨ・シンデレラ・メイさん(27)が「サンキュー」と声を掛けた。女性は教わった英語で「ユアウェルカム(どういたしまして)」と返した。
板橋区の特養「ケアポート板橋」(竹川節男理事長)で働き始めて三年のモンティシリヨさん。目線を合わせ手を取って話し、すっかり溶け込んだ様子。施設長の村上隆宏さん(44)は「最初は言葉の問題があっても、信頼関係ができれば国籍は関係ない」と話す。
この特養が外国人の介護職を初めて受け入れたのは二〇〇七年。母国の看護師資格を持つ二人のフィリピン人留学生だった。翌〇八年から経済連携協定(EPA)特定活動の候補生として同国やインドネシアから受け入れる。EPAは三年以上の実務経験の後、介護福祉士試験に合格しなければならない。これまで受け入れた十人のうち六人が日本の試験に合格し、五人が現在もここで働く。不合格で帰国したのは二人だけ。
この施設の特徴は、外国人スタッフを生活、仕事、勉強の三方面からチームで支えること。
来日後、職員がアパート探しに同行。使わない家電の寄付を募って提供する。介護技術や仕事で使う日本語は働きながら日本人スタッフがチームで教える。試験のため週一回、一日八時間の勉強時間を確保。講師を招いて日本語学習、制度や法律などを学ぶ。
給与や福利厚生は日本人職員と同等。試験に合格して家族を母国から呼び寄せる場合、子どもの保育園探しも手伝う。村上さんは「日本人を雇うのと同じ。主力として働く人材に育てたい」と話す。
外国人が戦力になるために働きやすい環境をどうつくっていけばいいか。モンティシリヨさんは「どんなことでも母国語で相談できる窓口、来日した人が集まれるコミュニティー、日本語が学べる場所が必要」と指摘する。

◆台湾、韓国とも介護職争奪戦
介護現場は深刻な人手不足に悩んでおり、外国人スタッフに長く働いてほしい思いが強い。ただ台湾や韓国などと介護職の争奪戦もすでに始まっており、「ケアポート板橋」施設長の村上隆宏さんは、「賃金や待遇もある。日本を働き先に選んでくれるだろうか」と話す。
ケアポート板橋は、来日後夜勤ができるようになるまで外国人スタッフとの「交換日記」も実施。「日本語の上達ぶりが分かり、仕事や生活での本音も語ってくれる」と、定着に向けてきめ細かな対応の重要性を訴えている。
ただ村上さんは「都会に希望者が集中し、人材確保で地域格差が出る可能性がある」と指摘する。別の施設の関係者は「日本で働くモチベーションをどう高めるか。永住権はその一つになるのでは」と話す。