外国人就労「最大34万人」基本方針


2018年12月26日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122602000142.html
https://megalodon.jp/2018-1226-0927-30/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018122602000142.html


政府は二十五日、改正入管難民法に基づく外国人労働者受け入れ拡大の新制度について、基本方針などを閣議決定した。高度専門職に限っていた従来施策を変更。特定技能1号、2号の在留資格を新設して単純労働分野にも広げ、来年四月から五年間で最大三十四万五千百五十人を受け入れる。外国人が大都市圏に集中しないよう措置を講じるとしたが、地方との賃金格差などを埋める態勢整備が課題だ。
閣議で受け入れ見込み数などを記載する分野別運用方針、関係閣僚会議で受け入れの環境整備施策をまとめた総合的対応策も決定した。
基本方針では、受け入れの必要性を具体的に示すよう関係省庁に要請。対象は十四業種で、見込み数は大きな経済情勢の変化がない限り上限として運用する一方、必要に応じて見直し、受け入れ停止を検討することも記した。報酬額は日本人と同等以上を求め、同一業務や業務内容に共通性がある場合は転職を認める。
基本方針は改正法施行後二年を目途に検討し、必要があれば見直す。
分野別運用方針には業種別の受け入れ見込み数や業務内容、新資格取得に必要な技能試験の開始予定時期などを記載。共通の日本語能力判定テスト(仮称)も新設し、当面はベトナムなど九カ国で実施する。

◆拙速制度 準備遅れ 14「業種」→「分野」言い換えただけ

政府が二十五日に閣議決定した外国人労働者受け入れ拡大の方策のうち、受け入れ見込み数などを定めた分野別運用方針は、受け入れ人数の詳しい内訳を示さなかった。改正入管難民法に基づく新たな在留資格の取得に必要な技能試験を来年四月の法施行時に実施するのは、受け入れ十四分野のうち三分野にとどまった。急ごしらえの新制度に実務的な準備が追いつかず、政府の国会答弁との矛盾が目立った。
運用方針が示した外国人受け入れ人数は、十一月の政府試算とまったく同じ数字。「十四業種」を「十四分野」という表現に変え、分野内の業務の種類を示しただけだった。
十一月の政府試算を巡っては、野党が国会審議で積算根拠となる詳しい内訳を示すよう求めたのに対し、山下貴司法相は「分野の切り分けと受け入れ見込み数を各省庁が精査中だ」と説明した経緯がある。
今回の運用方針では野党の疑問は解消されず、来年一月二十三日の衆院法務委員会の閉会中審査で追及の標的になることは確実だ。
新たな在留資格「特定技能1号」の取得試験を来年四月から行うのは、介護、宿泊、外食の三分野。介護分野は過去の技能実習生の受け入れ期間が特定技能1号への移行に必要な三年間に満たず、宿泊、外食分野は実習制度の対象外で、三分野とも試験をしなければ四月に特定技能者を受け入れることができない。
残る十一分野では「三年間の技能実習の修了者が特定技能1号に毎月、移行してくる」(法務省筋)。このため、試験の実施を急がず「一九年秋以降」や「一九年度内」に行う方針だ。
山下法相は国会審議で、新たな在留資格技能実習制度とは「別物だ」と力説していたが、今回の運用方針では実習生から特定技能への移行を期待していることが明らかになった。 (坂田奈央、村上一樹)