松橋事件、再審無罪へ 検察側「新たな立証はせず」 - 毎日新聞(2018年12月20日)

https://mainichi.jp/articles/20181220/k00/00m/040/087000c
http://archive.today/2018.12.20-091911/https://mainichi.jp/articles/20181220/k00/00m/040/087000c

熊本県宇城市(旧松橋(まつばせ)町)で1985年に男性(当時59歳)が刺殺された松橋事件で、殺人罪などで懲役13年に服した宮田浩喜(こうき)さん(85)の再審(裁判のやり直し)に向けた3者協議が20日午前、熊本地裁であった。検察側は新証拠の提出を断念し、殺人罪について有罪立証をしない方針を示した。同地裁で開かれる再審公判で無罪が言い渡されることが確実となった。初公判は2月8日で調整している。
3者協議は裁判所、検察側、弁護側が再審公判の進め方を話し合うもので、終了後、弁護団が検察側の方針を明らかにした。検察側は無罪求刑はしないものの、検察がこれまで提出した証拠を踏まえて最高裁が再審開始を認めており、熊本地裁が無罪判決を出すのは確実。主任弁護人の三角恒(こう)弁護士は「速やかな判決を求めたい」と語った。
宮田さんは当初、殺害を認め「シャツの左袖を切り取って凶器の小刀の柄に巻き付け、犯行後に布切れは燃やした」と自白。1審公判の途中から否認に転じ無罪を主張したが、確定判決は自白の信用性を認めた。
宮田さんは2012年に再審請求し、弁護団は確定判決後に熊本地検で証拠を閲覧した際に見つかったシャツ片などを証拠提出した。16年の熊本地裁、17年の福岡高裁は「燃えたはずのシャツ片」や、小刀の形状と遺体の傷が合わないことを示す法医学者の鑑定書を新証拠と認め「自白の信用性が揺らぎ、犯人ではない合理的疑いが生じた」として再審開始を決定。今年10月に最高裁で確定した。
検察側は再審請求審やその抗告審で、シャツ片について「実際に巻き付けられていたものとは別の布」と主張。傷と凶器の鑑定書についても「刺した方向や測定方法などで誤差が生じる」とする法医学者の供述調書を提出し反論していた。【清水晃平】