(大弦小弦)白板に描かれた1本の木。「病気だけを診るのではなく、患者の背景を診てあげてください… - 沖縄タイムス(2018年12月12日)

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白板に描かれた1本の木。「病気だけを診るのではなく、患者の背景を診てあげてください」。ベテラン医師はこう話しながら、生活や仕事、家族など患者を取り巻く関係性を表す枝を書き足した

▼以前取材した研修医らが学ぶ講座の一こま。病気の背景を知ることで治療や予防にもつなげられ、そのための患者との対話の重要性を説いた。医師にコミュニケーション能力は欠かせないと思った

▼医学部不正入試問題で、順天堂大学が女子や浪人回数の多い受験生を不利に扱っていたことが明らかになった。面接などの2次試験で「女子はコミュニケーション能力が高いため、補正する必要がある」と一律に減点していた

▼怒りを通り越してあきれるが、この差別的な扱いは10年前から行われていたという。調査した第三者委員会からも合理性がないと指摘され、人権を踏みにじる言い訳にも批判が相次いでいる

▼本来、個人の資質や特性を重視するべきで、それを見極めるのが面接者の仕事でもある。性別というバイアスで能力を区切る発想自体、許されない

▼大学側は「当時は私学の裁量の範囲内だと考えていた」と釈明した。身勝手なルールによって、医師になる夢と努力を奪われた受験生も少なくないはずだ。教育の機会を提供し、人材を育てる大学の使命は感じられない。 (赤嶺由紀子)