[大弦小弦]昨年公開された韓国映画「1987、ある闘いの真実」は… - 沖縄タイムス(2019年3月5日)

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昨年公開された韓国映画「1987、ある闘いの真実」は1987年、軍事政権の圧政にあえぐ国民が大統領の直接選挙制を勝ち取るまでの民主化闘争を描いた群像劇だ

▼きっかけは警察の拷問による大学生の死。証拠隠滅を謀る力に対し検事や医師、記者、看守が真実を暴こうと動く。一人一人の小さな勇気はうねりとなり、100万人超のデモが武装警察の隊列を寸断。銃口を花でふさいだ

▼日本がバブル景気に浮かれていた32年前、隣の国でこんなことが起きていたとは知らなかった。韓国にはこの経験があったから、朴槿恵前政権をデモで倒すことができたのだと知った

日本国憲法基本的人権などが与えられた日本本土と、沖縄の戦後史は異なる。米軍に服従の義務を押し付けられた占領下でも諦めず、権利を一つ一つ勝ち取った人々の歩みは韓国に通じる

▼1963年のきょう、キャラウェー高等弁務官は「沖縄の自治は神話だ」と演説した。それから56年、岩屋毅防衛相は県民投票について「沖縄には沖縄の、国には国の民主主義がある」と言い、新基地建設を正当化した

▼沖縄の未来は県民が決めるという当然の権利を奪い、国策への服従を強いる。国の沖縄政策に「自治神話論」が強固に根付いている。時代錯誤の神話は、一人一人が手を携えて断ち切らなければならない。(磯野直)