改正入管法、未明に成立 与党「拙速」批判押し切る - 東京新聞(2018年12月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018120902000146.html
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臨時国会最大の焦点となった改正入管難民法などは八日未明、成立した。在留資格を新設して外国人労働者受け入れを拡大する。成立を受け、政府は受け入れ見込み人数を決める分野別運用方針を年内に策定するほか、来年四月一日の施行までに、新資格の在留期限や雇用契約基準、悪質ブローカー排除などを定めた省令の整備を急ぐ。施行前に制度の全容を国会に報告する予定だが、具体的な内容は多岐にわたり、短期間で受け入れ態勢を整えられるのかどうかが課題だ。
業種を横断した全体的な方向性を示す基本方針の年内策定や、制度開始までに資格取得のための業種別技能試験の整備も必要となる。新制度の重要項目の多くは、運用方針や省令などで決まるため、野党だけでなく与党にも「チェックが難しい」との懸念がある。政府は全容を報告することで、国会軽視を否定する考えだが、説得力のある根拠を示せるかが問われる。
七日の参院本会議を主舞台にした入管難民法改正を巡る与野党攻防は、応酬を重ねて八日未明までもつれた。主要野党は安倍晋三首相や山下貴司法相に対する問責決議案を連発し、抵抗を過熱させた。与党は「拙速審議」との批判を押し切り、成立にひた走った。
野党は法改正を阻むために波状攻撃を仕掛けた。六日夕に提出した参院法務、農林水産両委員長の解任決議案に続き、七日は法相、首相の問責決議案を提出。扱いは全て参院本会議。議案印刷など事務作業に一〜二時間を要するため、時間切れを狙った戦術だ。
七日昼、本会議場で趣旨説明に立った自由党森裕子氏は「私は参院の戦後最長演説記録を持っている」と宣言すると、与えられた十五分間を大幅に超えて演説した。与党席からの怒号に「ルールを破っているのは安倍内閣だ」と声を張り上げて反論。伊達忠一議長は「降壇しなさい」と重ねて注意し、事務方に「やめさせろ、連れて行け」と強制退去を指示した。
対処のため、与野党議院運営委員会理事がすぐに集められた。森氏の振る舞いに憤った自民党の大家敏志氏が、立民の白真勲氏に暴言を吐き、小競り合いが起きる。野党側は問題視し、事態はさらに悪化。自民党が謝罪し、大家氏が理事を辞任して収拾するまでに、六時間半が経過した。
与党は野党側の手の内を読み切れなかった。
自民党国対筋は立民との水面下の接触を踏まえ、首相問責決議案は出ないと踏んでいた。六日の参院法務委への首相出席は、衆院では応じなかった対応。七日夜に首相問責決議案が提出されると、与党にも「野党の要求を受け入れてきたのに許せない」(自民党参院幹部)と火が付いた。
首相問責決議案を参院本会議で扱わず無視して入管難民法改正案の採決に突っ込む強行策も浮上したが、最後は首相と菅義偉(すがよしひで)官房長官が「逃げる理由はない。受けて立つ」と判断。与党は首相問責決議案の否決に続き、八日午前零時すぎに参院法務委で改正案の採決を強行。参院本会議で成立にこぎ着けた時、時計の針は午前四時を回っていた。

参院本会議投票結果
投票総数237

賛成161 反対76