大工の目で憲法説く 栃木の75歳男性が解説本 - 東京新聞(2018年12月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120702000285.html
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栃木県の山里で大工をしながら、70歳を過ぎて日本国憲法を読み込み、解説本を出版した男性がいる。憲法と国造りは、家を建てる過程に似ていると驚き、独自の「大工目線」で条文の意義を説いた。憲法を守りたい思いが強まり「憲法を学べば素晴らしさに気づく」と訴える。 (安藤美由紀)
男性は茂木町のペンネーム明良(あきよし)佐藤さん(75)で、著書は「大工の明良、憲法を読む 土台と大黒柱が肝心!」(現代書館、税別千六百円)。前文から順に条文を掲載し、文章の意味だけでなく、歴史的な背景や国民として意識すべきことも紹介している。
特徴は、憲法を「国の設計図」と捉え、所々に「大工の目線」で、自らの切り口や主張を添えていることだ。主権者の国民は施工主であり、国家建設の「棟梁(とうりょう)」である首相ら為政者を監視する必要性を説く。
戦争の放棄と戦力の不保持を掲げた九条では、「焼け跡に新しく建った」「世界で最も先進的な構造を持った家の大黒柱」と表現する。「膨大な戦死者を出した反省から生まれた。それを安倍晋三首相は変えようと言い出した」と、九条に自衛隊を明記する改憲に異議を唱えている。
法の下の平等」をうたった一四条では、戦前の植民地支配の反省から、憲法に基づく「戦後の新しい家」に住むのは「憲法を守る人。台湾人、朝鮮人だから住めないというのは一昔前の民族主義だ」と持論を展開する。
衆参両院いずれかの四分の一以上の要求があれば、内閣は国会を召集しなければならないと定めた五三条。安倍政権が野党の求めに応じず、違憲の可能性が指摘された経緯に触れ「憲法違反とは、手抜き工事。欠陥住宅をつかまされたら大ごとだ。主権者として許せるのか」と主張する。
明良さんは東京都渋谷区生まれ。大学図書館の勤務などを経て、三十代で大工の道へ。若い頃「親の言うことに従う」などの家父長制に反発を覚え、結婚して以来、姓と名を入れ替えたペンネームを使う。
もともと政治への関心は高く、一九八五年ごろから「敗戦の日」の八月十五日を起点にした「戦後カレンダー」を作製。毎年更新している。自費出版や雑誌への連載を重ねるうち、出版の話が持ち上がった。
明良さんは「有権者約一億四百万人のうち、一億人は憲法について何も知らないに等しいのでは。若者から国会議員まで学ぶべきだ。主権者として目を覚ましてほしい」と呼び掛けた。

大工の明良、憲法を読む: 土台と大黒柱が肝心!

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