自民の改憲案提示「先送り」は衆参ダブル選への布石なのか - 日刊ゲンダイDIGITAL(2018年12月8日)

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改憲案提示の先送りは周到に練られたシナリオなのか――。
自民党は、この臨時国会で、自衛隊明記など改憲4項目を憲法審査会に「提示する」ことを予定していた。憲法審の定例日は木曜だが、今国会で最後のチャンスだった6日の開催は見送られた。そのため、「改憲発議は遠のいた」「来年1月召集の通常国会での提示を目指す」などと報じられている。
「先月29日に与党側が憲法審の開催を強行し、猛反発の野党に配慮した格好ですが、先送りは想定内です。今国会では“野党が議論を放棄した”という形を国民に見せることが重要だった。通常国会でも、憲法審で議論が進まなくて結構。“それなら国民に聞いてみよう”と、衆参ダブル選のテーマにし、一気に改憲機運を高めるプランもあります。改憲とダブル選をチラつかせることで、政権は求心力を維持できる。うまい手ですよ」(自民党ベテラン議員)
通常国会の召集は1月下旬になる見込み。参院選は7月4日公示、同21日投開票の日程が有力だ。自民党の甘利選対委員長は1日、大津市での党会合で、衆参同日選について「何があってもいいように備えてほしい」と呼びかけていた。衆参同日選の可能性は高まっている。
選挙公約に改憲4項目を潜り込ませ、同日選で勝利すれば、安倍首相が「改憲案も国民の信を得た」と言い出すのは目に見えている。安倍首相の周辺からは「憲法審なんてスッ飛ばして国会に提出すればいい」という強硬論も聞こえてくるのだ。安倍首相に近い議員たちは、議員提出による改憲を目指す超党派の勉強会を立ち上げ、準備を進めている。
国民投票を念頭に、安倍側近の下村博文文科相が本部長を務める党憲法改正推進本部は、5日の会合に政治心理学者の川上和久氏を招き、「憲法改正国民投票の最大の壁とは」をテーマにヒアリングを行った。川上氏は、改憲反対派を名指しで批判するなどのネガティブキャンペーンが効果的だと講演。「改憲派も何らかの『敵』をつくり、国民の不安や怒りを覚醒させる必要がある」と話したという。
「呆れて言葉もありません。憲法改正は不安や怒りをあおってやるものではないでしょう。改憲が必要で正しいという自信があるのなら、国民が納得するロジックを示せばいい。必要なのは、冷静な議論のはずです」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
敵をつくって攻撃するネトウヨ手法の改憲なんて、日本の汚点になるだけだ。