(大弦小弦)「給付型奨学金のおかげで進学でき、夢に向かって勉強できている… - 沖縄タイムス(2018年11月29日)

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「給付型奨学金のおかげで進学でき、夢に向かって勉強できている」。先週あった沖縄子どもの未来県民会議の事業報告会で、児童養護施設出身の女性が感謝の言葉を語った。登壇には勇気が必要だったと思う

▼小4の時、父の家庭内暴力が原因で両親が離婚、翌年児童養護施設に入所した。高校時代のアルバイトで170万円をためたが、専門学校に進む費用には足りず、高3最初の進路希望用紙には「就職」と書いた。「みんなこうやって諦めるんだなあ、って思ったら涙が出た」

▼だがその夏、県民会議が児童養護施設や里親家庭の出身者対象の給付型奨学金を創設し、進学の道が開けた。創設が翌年ならば現在の彼女はなかったかもしれない。未来に向かう姿にエールを送りたい

▼一方で彼女の仲良しの同級生は、経済的事情で希望だった進学を断念した。母子家庭できょうだいが多かった。施設入所者か否かが進路の分かれ目となった

▼県民会議の奨学金の来春からの給付内定者は13人。当事者にとっての意義は計り知れないが、1万5千人近い県内高校3年生の0・1%にも満たない。さらなる拡充が求められる

▼そもそも高等教育の学費の高さ、私費負担の重さについても議論が必要だ。支援の増額には限界がある。社会の仕組みを問わなければ子どもの貧困はなくせない。(田嶋正雄)