解雇の実習生、続々帰国 日立の計画通らず在留資格失う - 東京新聞(2018年11月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111902000237.html
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日立製作所笠戸事業所(山口県下松市)のフィリピン人技能実習生が実習期間を残し、相次ぎ解雇されている。日立の実習計画が認可されず、在留資格がなくなったことが理由。元実習生は、関係機関の柔軟な対応がないまま帰国に追い込まれており、現行制度を問題視する声が上がる。
これまでに解雇されたのは九十九人。十八日には二十人がフィリピンに戻った。ある元実習生は「日立は一流の企業だと思っていた。できれば実習を続けたかった」と嘆く。
笠戸事業所では鉄道の車両を製造。九十九人は三年間で、配電盤や制御盤など電気機器を組み立てる技術を習得する予定だった。
だが法務省と監督機関の外国人技能実習機構が七月、目的の技能を学べない作業に従事させられている疑いがあるとして事業所を検査。日立が機構に出した実習計画が認可されない状況が続いている。九十九人は実習期間が一〜二年ほど残っていたが、「技能実習」の在留資格の期限が更新できず、日立が解雇した。
広島市の労組「スクラムユニオン・ひろしま」によると、電線を束ねたり、窓枠を運んだりする雑務ばかりだったと証言する実習生がいるという。
だが日立は「実習計画に沿って適切に実習した」と強調。「計画が認められれば、また働いてもらいたい」としている。実習が中止になれば、元実習生に残りの期間の賃金補償をする。
国士舘大鈴木江理子教授(労働社会学)は「本人の責任ではなく実習が続けられなくなった場合、現行制度では実習生を保護する規定が不十分だ」と指摘した。

◆「もっと働きたかった」20代男性、2年残し比へ

「もっと日本で働きたかった」。笠戸事業所で技能実習生として働き、約二年を残し解雇されたフィリピン人の二十代男性が十八日に帰国した。
実家はコメ農家で、十代後半で父が亡くなってからは、一家の大黒柱として働き家計を支えた。妹の学費も払い続けた。
「給料はフィリピンの三倍。日本で働きたい」と、訓練学校に入学。日本語から箸の持ち方まで勉強し、配電盤の仕事をするつもりで来日した。だが割り当てられたのは、本来の実習とは思えない新幹線の天井などの組み立て。疑問に感じる日々が続いた。
職場の日本人の同僚と仕事帰りに一緒にビールを飲み、日本料理を振る舞ってもらったこともある。帰国が決まると、同僚は「寂しいが自分にはどうしようもない。また戻ってきて」と告げたという。
支援した労組「スクラムユニオン・ひろしま」によると、実習生の基本賃金は月約十三万五千円で残業代が加わる。男性は月給の七割を母に送金。「お金はいつもなかった。目玉焼きやゆで卵をおかずにして食べた」という。「本当はもっと日本で仕事を続けたい」と繰り返した。

<外国人技能実習制度> 外国人を企業などが受け入れ、習得した技術を母国の経済発展に役立ててもらう制度。1993年に創設され、期間は最長5年間。対象となる職種は16日時点で農業、建設、食品製造、介護など80に上る。6月末時点での実習生は約28万人でベトナム、中国、フィリピンの順に多い。時間外労働や賃金不払いなどの問題点が指摘されている。