(政界地獄耳)3つの裁判と入管法改正議論 - 日刊スポーツ(2018年11月3日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201811030000222.html
http://archive.today/2018.11.04-015454/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201811030000222.html

★日本統治下の朝鮮半島で戦時中、日本本土の工場に動員された韓国人の元徴用工4人が、新日鉄住金を相手に損害賠償を求めた訴訟で、先月30日、韓国大法院(最高裁)は個人の請求権を認めた控訴審判決を支持し、日韓間は大騒ぎとなっている。しかしながら日本の外務省は1991年8月27日の参院予算委員会で当時の外務省条約局長・柳井俊二は「いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」と答弁しており、首相・安倍晋三、外相・河野太郎が率先して怒りをぶつける様は俯瞰(ふかん)する外交どころの騒ぎではない。

★同日、日本では福島第1原発の事故をめぐり、旧経営陣の刑事責任を問うべきかが争われ、当時の最高責任者である元会長・勝俣恒久への初の被告人質問があった。そこでは「聞いていない」「福島沖には大きな津波が来ないと聞いていたので問題意識はなかった」「原発の安全は、現場が全て行うので責任も現場にある」と言い放った。これには東京電力社員をはじめ、原発事故当時から現在までも現場で命を張って作業に当たっている人たちも開いた口がふさがらないのではないか。

★これまた同日、日本では高校の授業料無償化を巡り朝鮮学校を対象から外したのは違法だとして、元生徒らが国を訴えた裁判の控訴審で、東京高裁は元生徒らの控訴を退ける判決を出した。元文科相下村博文は「無償化は国民の理解が得られない」とコメントした。いずれもこれから移民開国しようとする国での司法の判断だ。徴用工とは時代が違えど外国人労働者を奴隷化し、単純労働を安価に使う当時の仕組みとこれからの受け入れが重なる。原発事故でも言葉巧みに外国人労働者が現場に送り込まれている事態も発覚している。そして国内の在日韓国・朝鮮人への差別は後を絶たない。こんな状況で入管法改正議論を安直に決めていいのだろうか。同じ日の裁判をどう受け止めればいいのだろうか。(K)※敬称略