http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018102202000134.html
https://megalodon.jp/2018-1023-0926-06/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018102202000134.html
ワシントンでの特派員勤務を終えて十三年がたった。この間、米国では、自分の想定とは異なることが相次いで起きている。
早くても二〇一二年と読んでいたオバマ氏の大統領選出馬は四年早まり、しかも当選を果たした。俗物扱いされていたトランプ氏までもがライバルを蹴落として大統領に。米国政治の変転は自分の想像をはるかに超えた。
メディアに目を転じれば、インターネットはフェイクニュースを拡散し、有権者の政治行動にも大きな影響力を持つに至る。当時の取材では、誤った情報はネットの持つ双方向機能で淘汰(とうた)されると楽観していたのだが…。
ネットの隆盛の一方で、最近発表されたノースカロライナ大学の調査によると〇四年以降、米国全体で五分の一超の地方紙が廃刊に追い込まれた。想像を超える速さだ。
全米三千百四十三郡のうち半数では現在一紙しか発行されておらず、地元紙が存在しない郡も二百郡近くに上る。
地域密着の新聞がなくなると、権力の監視役を失い、汚職と腐敗がまん延した、という別の米大学の研究結果もある。民主主義社会で新聞が担う役割は極めて重い。
地域ニュースが得られない状況を「ニュース砂漠」というらしい。ネットの隆盛は日本も米国と同じで、決して対岸の火事ではないが、知恵と工夫で砂漠化を阻止するのも、新聞に携わる者の役目だと思う。(豊田洋一)