米最高裁長官、トランプ大統領と異例の舌戦 判事の独立性めぐり トランプ政権 北米 - 日本経済新聞(2018年11月22日)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3806024022112018000000/
http://archive.today/2018.11.23-005259/https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3806024022112018000000/

【ワシントン=中村亮】米連邦最高裁判所のロバーツ長官は21日「オバマ系やトランプ系、ブッシュ系、クリントン系の判事はいない」との声明を発表した。不法移民対策を認めない判決を下す判事を「オバマ系判事」と非難するトランプ大統領に反論した格好だ。トランプ氏はすぐさま「オバマ系判事は間違いなくいる」と重ねて主張。司法と行政の長が舌戦を繰り広げる異例の事態となった。
ロバーツ氏は声明で「米国には、出廷した人々を公平に扱うよう最善をつくす献身的な判事の集団がいる」と説明。「独立した裁判官に誰もがありがたみを感じる」と指摘した。公平性や独立性を強調したのは、思い通りにならない判事を公然と批判するトランプ氏の言動は受け入れられないとの意思表示だ。最高裁長官が現職大統領に反論するのは珍しい。

トランプ氏も同日、ロバーツ氏の声明を受けて「ジョン・ロバーツ長官よ、申し訳ないがオバマ系判事は間違いなくいる」とツイッターに投稿した。リベラル色が強いカリフォルニア州などを管轄する9区の裁判所を名指しし「独立した判事がいるとすればすばらしいことだ」と皮肉った。

トランプ氏は重要政策に位置づける不法移民対策に反対する9区の裁判所に不満を募らせてきた。今月には幼少期に親と不法入国した若者の強制送還を猶予する制度の撤廃が認められず、メキシコ国境からの移民を難民申請の対象から事実上外す措置も適用を差し止められた。20日にはホワイトハウスで記者団に「9区での裁判はいつも負ける」と指摘し、一部の判事はリベラル色が強いとして「オバマ系判事」と非難した。

ロバーツ氏はブッシュ(子)政権の指名を受けて2005年9月に最高裁長官に就任した。保守派とされるが医療保険制度改革法(オバマケア)を擁護し、過去にはトランプ氏が16年の大統領選で「悲惨だ」と批判したこともあった。

10月上旬にカバノー判事が承認されて最高裁判事は保守派が多数派となったが、ロバーツ氏は穏健な考えを示すこともある。米社会を二分する問題への判決を左右する人物との見方がある。