社会復帰 元受刑者が求人誌 出所者の就労を支援 - 毎日新聞(2018年10月7日)

https://mainichi.jp/articles/20181007/k00/00m/040/121000c
http://archive.today/2018.10.07-011946/https://mainichi.jp/articles/20181007/k00/00m/040/121000c

罪を犯した人の就労を支援する求人誌を発刊する元受刑者がいる。広島県福山市で建設会社「豊生(ほうせい)」を営む山本晃二さん(40)。自身も出所後、不安を抱えながら職を得た経験から「雇ってもらえたからこそ今がある。社会復帰へ走り出せる環境を広げたい」と話す。【岩崎邦宏】

求人誌は月刊でタイトルは「ネクスト」。今年4月に創刊した。広島県をはじめ、北海道や大阪府など各地の建設、介護会社など約40社の求人情報を掲載。500部を作り、全国の刑務所や少年院、更生保護施設など150カ所以上に郵送している。
山本さんは横浜市出身。少年時代から非行を繰り返した。20代の頃に少年刑務所に入り、出所後に仕事を得ても長続きせず再び罪を犯し、服役は計7年に及んだ。2012年に社会復帰。子供と一緒に待ちわびていた妻(33)から「頼むから仕事を」と懇願され、知人のつてをたどり、35歳で初めて建設業界に飛び込んだ。
午前6時に現場に出る毎日。山本さんは「人の3倍働き、人の3倍笑顔を見せ、どんな約束もほごにしないよう心掛けた」と振り返る。「あの人は元受刑者だから」というささやきは、「元受刑者だけどよく働く」という評価に変わった。36歳で独立を決意し、豊生を設立した。
山本さんは元受刑者や元非行少年を積極的に雇い、今は10〜40代の十数人が働いている。その一人、金平翔さん(20)は「一人前になり、将来は会社を経営したい」と話す。
汗を流す若者らの姿に、山本さんは「多くの会社が再起の受け皿になってくれたら。人手不足に悩む会社のニーズもあるはず」と求人誌の製作を思い立った。昨秋から知人に声を掛け、電話による営業で新規開拓し、創刊にこぎ着けた。
ネクストを通じて就職が決まった例も出ており、山本さんのもとには受刑者から求人誌の送付を頼む手紙も届く。山本さんは「受け皿ができれば再犯は減り、社会が変わるはず」と期待している。
ネクストの問い合わせは豊生(084・959・4882)。

再犯と就労
定職を得られず再犯するケースは後を絶たない。法務省によると、2017年に刑務所に再入所した約1万1000人のうち72%が無職だった。同省は出所者の更生を支える民間企業を登録し、雇用した場合は奨励金を払う「協力雇用主」制度を推進。今年4月1日現在で2万704社が登録されているが、実際に雇っているのは4.3%の887社にとどまる。