女性と政治 すそ野をまず広げよう - 東京新聞(2018年10月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018100402000187.html
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「女性活躍」の看板が泣く。第四次安倍改造内閣で女性閣僚は一人となった。本来、その看板を支えるべき女性議員自体が少ないことも原因だろう。政治に参加する間口を広げていくことが必要だ。
二〇一五年、カナダのトルドー首相は三十人の閣僚のうち半数の十五人を女性とした理由を問われ、肩をすくめながらこう答えた。「二〇一五年だから」。数字合わせだけでなく、もうそういう時代でしょ、というメッセージが込められていた。
安倍首相は新内閣に女性閣僚が一人しかいない理由を問われ、片山さつき地方創生相には「二人分、三人分」の存在感があると釈明した。一時は女性閣僚が五人いたことを考えれば、「女性活躍推進」という看板と実際とが遠ざかり続けているのは確かだ。政治の姿を変えていくには、数の力も必要だろう。
国際組織の列国議会同盟によると、女性のアーダーン首相が生後三カ月の娘を抱っこして国連の会合に出席したことが話題となったニュージーランドは、下院の女性議員比率が世界百九十三カ国中十九位の38・3%に上る。女性議員を増やすためのクオータ(割当)制を導入しているフランス、英国、ドイツも30%台。日本は百六十一位の10・1%だ。
女性が不利益をこうむるガラスの天井は政治の世界だけに存在するのではなく、また日本に限った話ではない。ノーベル物理学賞の受賞が決まったドナ・ストリックランドさんは、同賞の女性受賞者としては一九〇三年のマリー・キュリーから数えてまだ三人目だ。ただ政治が他と違うのは、他の分野にも制度面で影響を及ぼしていくことができるという点だ。
身近な地方議会から間口を広げていくのも一つの方法だろう。
来春には統一地方選がある。今年五月、政治分野の男女共同参画推進法が施行された。国会や地方議会の選挙で男女の候補者の数が「できる限り均等」となることを目指す理念法だ。市川房枝記念会女性と政治センターの調査では二〇一五年、女性議員が一人もいない地方議会は全体の二割強にも上る。
より豊かな言論は多様性から生まれ、民主主義の土台の厚みとなる。女性が参加しやすい環境を醸成することは、年齢や職業などが偏りがちな地方議会に、新風を運ぶ呼び水ともなるはずだ。まず各政党の候補者選定など、足元からの一歩を望みたい。