http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018052102000160.html
https://megalodon.jp/2018-0521-0955-59/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018052102000160.html
女性議員を増やす取り組みを政党に求めた、議員の手による新しい法律が誕生した。男性が大半を占める議会を、多様な声を生かせる場に変える一歩になるのか。政党のやる気が問われる。
新たな法律は「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)。政党や政治団体に対し、国政や地方の選挙で候補者数が男女均等になるよう、目標設定に努めることなどを求めた。
女性議員を制度によって増やそうという、政治家の意志を込めた日本初の法律である。
日本の女性議員の割合の低さは国際的に際立つ。安倍首相は二〇二〇年までに指導的立場にいる女性を三割に増やすことを目標に掲げたが、昨年の衆院選で当選した女性議員の割合は一割にすぎない。地方では「女性ゼロ」の市町村議会が全体の二割もある。政治の場の男女格差はあまりに大きい。
社会のありようもニーズも多様になる中で、有権者の代表で構成する議会に多様な視点があるとは言い難い。待機児童問題は後回しになり、セクシュアル・ハラスメント問題にも反応や対応の鈍さが目立っている。これでは「女性の活躍」どころではない。
この現状は女性議員の少なさと無関係とはいえないだろう。多様な経験や視点を持つ人が増えていけば、今より政策論争は活発になるはずだ。女性だけではない、性的少数者や障害のある人たちの政治参加も促されるのではないか。
法律は、昨年の通常国会では成立に至らず、衆院解散で廃案になった。罰則はなく、強制力もない理念法にとどまったために、実効性に乏しいという批判もある。女性議員を増やしてきたヨーロッパの国々や、アジアでは韓国や台湾などで採用され、議席や候補者の一定数を女性に割り振る「クオータ制」の導入も見送られた。
それでも、国会の全会派が一致して、男女均等を目指す姿勢を示した意義は大きい。各党は女性候補を増やす取り組みを果敢に実行してほしい。
地方議会では無所属の議員が多く、新しい法律だけでは女性議員を増やせない。女性が議会に参加しやすい環境や制度を整えるのはもちろんのこと、夜間や休日に議会を開いたりすることも日中働く人たちの政治参加を促す。
来年は春に統一選、夏は参院選がある。政党は候補者数の男女均等化に努めているか。多様な声を生かそうとしているのか。有権者は投票の判断材料としたい。