少ない女性候補 多様性阻む壁を崩せ - 東京新聞(2019年4月3日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019040302000159.html
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立候補者数の男女均等を目指す法律が施行されたのに、統一地方選で女性比率はあまり増えていない。多様性を阻む壁を崩すことは地方自治の活性化にもつながる。政党はもっと汗をかくべきだ。
道府県議選の女性候補者は全体の12・7%。前回から微増にとどまる。とくに自民党は4・2%と少なさが際立つ。少数者の意見が意思決定に反映されるには三割は必要という米研究者の理論は知られており、政府が掲げる女性管理職などの割合の目標も二〇二〇年に三割だ。立候補の段階でもその数字とはほど遠い。
女性の政治分野への進出が遅れているとして「政治分野の男女共同参画推進法」はできた。どの国でも政治の世界に女性が加わることは至難の業だった。
しかし百三十カ国以上が立候補者や議員の一定枠を女性に割り当てるクオータ制を採用することで比率を上げている。日本の推進法は紆余(うよ)曲折の末、候補者数を「均等」にするよう政党に努力を促す理念法にとどまった。
育児との両立やセクハラなど、女性の方が高く感じる壁もある。だが立候補休職制度が整っていなかったり、供託金が負担になったりと、リスクが高いわりに議員という仕事の魅力が乏しく映ることは、性別にかかわらず幅広い裾野から立候補者が出てくることを妨げる障壁になっている。
地方議員のなり手不足は深刻化しており、夏には参院選もある。政党は、推進法の理念を実現していく中で、普通の人から政治を遠ざけている独特の土壌や構造的な問題を改善する努力を重ねる必要がある。
人口が減少していく中、地域の魅力を競うことが自治体の大きな使命となっている。財政規模も縮小していくことを考えれば、何を削るかの判断の意味も重くなる。多様な目で行政を監視、提案していく議会の役割は強まっている。
埼玉県八潮市議会は三月、推進法の施行を受け「多様性の尊重」を盛り込んだ議会基本条例案を可決した。
「議会の機能強化のため、議会活動と育児・介護等が両立できる環境整備等に努め、多様な立場の市民の声が反映されるようにしなければならない」と定める。女性だけでなく身障者や性的少数者(LGBT)など多様な代表が集まる議会の姿を念頭に置いているという。
統一選が地方議会の未来の姿を候補者と有権者がともに考える場にもなればと願う。