公明と9条改憲 歯止め役を果たせるか - 東京新聞(2018年10月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018100102000143.html
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巨大な安倍自民党に対し、公明党は歯止め役を果たせるのだろうか。安倍晋三首相は九条に自衛隊を明記する改憲を急ぐ。「平和の党」を自任する公明党にとっては、存在意義が問われる正念場だ。
公明党はきのう党大会を東京都内で開き、山口那津男代表(66)の六選を承認した。井上義久幹事長(71)を副代表に、後任には斉藤鉄夫選挙対策委員長(66)を起用する新執行部人事も決めた。
自民党との連立政権は小渕恵三首相時代の一九九九年に始まった。三年三カ月の野党時代を挟んで、すでに二十年近く、行動を共にしていることになる。安倍首相は党大会でのあいさつで「風雪に耐えた」関係を強調した。
自公連立が始まる前、国会は政権与党の自民党参院単独過半数に達しない「ねじれ」状態だった。政治は不安定化しており、公明党の連立参加が、政治の安定に果たした役割はあったのだろう。
以前は、選挙協力を得たい自民党が、公明党に譲歩する場面も多く見られたが、安倍自民党の政権復帰後は、公明党が譲歩を迫られる場面が目立つ。例えば、二〇一五年に成立した安全保障関連法とその根拠となる閣議決定である。
公明党は、歴代内閣が違憲としてきた「集団的自衛権の行使」の容認には慎重で、一定の歯止め役を果たしたとは言える。
しかし、山口氏が連立離脱の可能性を早々に否定し、自民党側に押し切られたことは否めない。山口氏はかつて本紙のインタビューに「いわゆる集団的自衛権を認めたわけではない」と答えたが、限定的な行使容認の閣議決定だったことは、首相自身が認めている。
同じようなことが、九条改憲でも起こらないか、心配だ。
九条に関し、公明党はかつて自衛隊の存在を認める条項を加える「加憲」を提唱したことがある。首相が自衛隊の存在を明記する九条改憲案を主張するのも、公明党の理解を得るためなのだろう。
とはいえ、限定的にせよ違憲性が指摘される集団的自衛権の行使に該当する活動を行う自衛隊の存在を憲法に明記すれば、他国同士の戦争には参加しない九条の精神は形骸化しかねない。公明党がそれを認めていいのか。
山口氏は党大会で「九条改正が緊急になされるべきだとは必ずしも言えない」と慎重姿勢を示したが、「平和の党」を掲げるのであれば、九条改憲を進める安倍首相に押し切られることなく、覚悟を決めて対峙(たいじ)すべきである。