<安倍政権に注文する>強引な改憲に走るな - 東京新聞(2018年9月22日)

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自民党総裁に連続三選された安倍晋三首相は、憲法九条への自衛隊明記を含む改憲に強い意欲を燃やしている。
記者会見でも「総裁選の最大の争点だった。結果が出た以上、大きな方針に向かって一致結束して進んでいかなければならない」と語った。目標は二〇二〇年の新憲法施行である。総裁の任期は二一年九月までの三年だから、自分の任期中で念願の憲法改正を達成したいのだろう。
今秋に召集される予定の臨時国会で早くも党改憲案を提出し、連立与党を組む公明党と協議を進める方針という。施行の年を区切っているのだから、何とも急ぎ足であるのがわかる。
国の最高法規であり、戦後日本の平和主義にかかわる規定だ。スケジュールありきで改憲を進めてならないのは当然である。
そもそも首相の九条改憲案は昨年五月にビデオメッセージの形で唐突に提案されたものだ。戦力不保持などを定めた九条二項を維持したまま自衛隊を明記するという案である。これは一二年の自民党改憲草案とは全く様相が異なる。確かに首相の改憲案は衆院選の公約でもあったし、党大会でも決議されている。
だが、総裁選を戦った石破茂氏はこれに「反対」と明確に唱えていた。憲法改正推進本部長代行の船田元氏も「首相の改憲への姿勢に同調できない」とし、総裁選で抗議の白票を投じている。自民党内でも意見が分かれているのが実態ではないのか。
さらに公明党に至っては、山口那津男代表が「憲法改正の優先順位が高いとは言えない」とくぎを刺している。与党内でも足並みがそろわぬ現状である。
国民の意見はどうか。どんな世論調査でも九条改憲には「反対」の声が上回っている。国民が積極的に望んでもいない改憲に首相が前のめりになるのはおかしい。
改憲の動機が何なのかも不明瞭である。「自衛隊違憲論争に終止符を打つ」などと語っているが、激しい論争のある現状ではない。違憲論はあくまで憲法学者の学説である。
政府は自衛隊発足時から合憲説をとり、それが定着している。国民も自衛隊に対し、反目しているわけではない。
九条の平和条項を変えれば、軍事国家への道になるかもしれない。九条改憲には軽々に踏み込んではならない。