(大弦小弦)前回知事選の取材ノートを見返していたら、「この戦いに勝って差別を… - 沖縄タイムス(2018年10月1日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/322843
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前回知事選の取材ノートを見返していたら、「この戦いに勝って差別を終わらせる」という言葉が目に飛び込んできた。保守にも革新にも失望し、政治から離れた男性。今回だけは、と翁長雄志氏を応援していた

▼当時、安倍政権は辺野古新基地に反対する沖縄の自民党国会議員5氏を記者の前に並べて屈服させ、工事を始めた。屈辱感が男性を突き動かした。沖縄全体がうねっていた

▼その後の4年間、沖縄はまるで民主主義の学校のようだった。公約を破った仲井真弘多氏に退場を促し、代わった翁長氏は公約を守った。県民は投票だけで終わらせず、必要なら主権者として体を張って現場で抵抗した

▼政権はその民意を踏み破り、辺野古の海をつぶしてきた。県民の心に諦めを植え付け、新基地反対という選択肢自体を奪おうとした。だが、県民は命の選択肢を諦めず、手放しもしなかった。玉城デニー氏を選んだ

▼高揚より、静かな覚悟という言葉がふさわしい。道が険しいことを誰もが知っている。先の男性は「もう一回、民主主義が生き返るチャンス」と表現する

▼少数派を差別し、人権を脅かす数の暴力を民主主義とは呼ばない。政権とそれを支える国民大多数が、沖縄に息づく健全な民主主義を傷つけてきた。4年間の猶予ができた。今度こそ民主国家日本が応える番だ。(阿部岳)