(政界地獄耳)マインド変える機を逃した自民 - 日刊スポーツ(2018年9月22日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201809220000188.html
http://archive.today/2018.09.22-013153/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201809220000188.html

自民党総裁選挙は党員票が、国民の政権への怒りと批判を反映した投票結果となり、国会議員が首相・安倍晋三への忠誠心を見せたことに対して隔たりと不安を残した。それは開票直後の首相と安倍陣営幹部の狼狽(ろうばい)ぶりを見ればわかる。党員票は党中央や政権の示す考えに地方の怒りを表しているとも言え、来年の統一地方選挙参院選を迎える自民党としての政策の立て直しを示唆している。

★首相が総裁選挙のパンフレットで示したような、名目GDP政権交代前493兆円から551兆円で過去最高、正社員の有効求人倍率の統計開始以来過去最高、高卒大卒の内定率過去最高水準、国・地方税収合計は過去最高など景気回復の数字の羅列は、出せば出すほど地方経済の実態とはかけ離れ、党員たちを「政権は何もわかっていない」という気持ちにさせたのではないか。

★今まで野党に指摘されていた時には政権与党である自民党に任せるしかないので批判として表れなかったが、総裁選挙で元幹事長・石破茂から人口急減、少子化、超高齢化、人手不足、貧困拡大、地方の疲弊、東京への一極集中など、未来はもはや過去の延長線上にはないと指摘されると党員は過去最高水準の数字よりも石破の言葉を切実に受け止めたということだろう。ところが待ったなしの現実を示した石破に対して自民党の大半の議員や安倍陣営は「野党のような政策」だと石破の指摘を一笑に付した。加えて総裁選の最中には石破の行動を制限したり、いじめたりして議論のチャンスさえも摘んでしまった。つまり政権を変えてマインドをチェンジするタイミングに自民党自身が気付かなかったのではないか。その結果は来年の参院選挙で見えるはずだ。(K)※敬称略