(余録)ここ数年、「共感力」という言葉をよく耳にする… - 毎日新聞(2018年9月18日)

https://mainichi.jp/articles/20180918/ddm/001/070/121000c
http://archive.today/2018.09.18-004827/https://mainichi.jp/articles/20180918/ddm/001/070/121000c

ここ数年、「共感力」という言葉をよく耳にする。就活のキーワードにもなっている。相手の側に立って考えられる能力のことだ。
例えば漫才のネタ作りにも共感力が必要だといわれる。ただし、客の誰もが共感し、安心して笑えるものもあれば賛否を巻き起こす刺激的なものもある。お笑いコンビの「ウーマンラッシュアワー」が昨年暮れにテレビで披露したネタは後者の方だろう。
「沖縄の在日米軍に払っている予算をなんと言う?」「思いやり予算」「アメリカに思いやりを持つ前に」「沖縄に思いやりを持て」。インターネット上でも大きな反響を呼んだ。
コンビの一人で、過激なツイートで知られる村本大輔さんのアイデアという。「炎上芸人」と呼ばれる当人とすれば面目躍如か。最近では珍しく、時事問題ネタがうけたのは間違いない。
米軍普天間飛行場辺野古移設の是非を争点に、沖縄県知事選が始まった。自民党総裁選の投票も近い。安倍晋三首相は「さまざまなご批判を真摯(しんし)に受け止め……」「謙虚に丁寧に政権運営を行っていきたい」と語った。では、沖縄から届く政府批判の声にも共感力を発揮できるだろうか。政権がそれをできるなら、沖縄と歩み寄る道も開けるかもしれない。
かのお笑いコンビには原発問題に絡めたネタもある。村本さんの出身地、福井には原発が多いが、街は夜7時になると真っ暗になるとか。「これだけは言わせてください。電気はどこへゆく!」。総裁選の争点にならなくても共感できる。