犯罪被害者の救済 きめ細かな支援をさらに - 毎日新聞(2018年8月24日)

https://mainichi.jp/articles/20180824/ddm/005/070/113000c
http://archive.today/2018.08.23- 184348/https://mainichi.jp/articles/20180824/ddm/005/070/113000c

犯罪に巻き込まれた人の被害を軽減し、回復を図る。それには被害者が抱える問題に適切に対処するきめ細かい支援が必要だ。
犯罪の被害を受けた本人やその家族は、経済的に苦しくなったり、精神的なダメージを受けたりし、日常生活が困難になることが多い。そうした人たちへの支援などを定めた条例を制定する動きが広がっている。
名古屋市は4月に施行した条例で、一定期間ヘルパーの派遣や食事の配達などをする制度を設けた。相談をためらう性犯罪被害者にも支援金を給付し、立ち直りを後押しする。
福岡県は、殺人事件の遺族が加害者に損害賠償請求する場合、訴訟を援助する。3月に制定した条例に、都道府県では初めてその規定を盛り込んだ。
神戸市も7月に条例を改正し、残された被害者家庭の子どもに対し教育支援する制度を新たに設けた。
2005年に施行された犯罪被害者等基本法は、被害者の救済策について国の責務を規定する一方、地方自治体が独自に施策を講じる責任を同時に課している。
犯罪の被害者や家族は、犯罪の形態や被害の状況でさまざまな環境の下に置かれる。個々の被害者らの生活に目配りした自治体の対応は、国の施策では足りない部分を補う役割を果たすものだ。
苦難に遭遇した被害者がさらなる苦しみを強いられたり、孤立したりすることがあってはならない。地域の主体的な取り組みがさらに広がるよう求めたい。
そのためには、被害を受けた本人や家族らが何を必要としているかを把握することが大事だ。
名古屋市は条例制定にあたって昨年、支援団体の協力で被害者75人から聞き取り調査を実施した。報告書からは、事件直後は弁護士の紹介や警察への付き添いなど司法手続きに伴うニーズが多いことがわかる。
一方、時間がたつと、専門家による精神的なケアを求める声が多くなる。救済には、息の長い支えが必要だ。専門家のいる相談機関の整備は全国的にまだまだ不十分で、その充実は喫緊の課題となる。
インターネット上での中傷など被害者が2次被害を受ける危険も増している。この対策も急がれよう。