(余録)「長くつ下のピッピ」は自由奔放な少女の物語だ… - 毎日新聞(2018年8月24日)

https://mainichi.jp/articles/20180824/ddm/001/070/140000c
http://archive.today/2018.08.24-092555/https://mainichi.jp/articles/20180824/ddm/001/070/140000c

長くつ下のピッピ」は自由奔放な少女の物語だ。9歳のピッピは一人でサルと馬と暮らし、毎日気ままに冒険する。行儀は悪いが正義感が強く力持ちで、いじめっ子や悪い大人をやっつける。発表から70年過ぎた今も世界の子どもたちが憧れる。
スウェーデン人の著者アストリッド・リンドグレーンは生前、そうした作品が書けたのは「私が幸福な子ども時代を過ごしたから」と語っている。両親の愛情に包まれて、朝から晩まで農場で木に登ったり洞穴を掘ったりして遊んだ記憶がもとになっている。
彼女は40年前、ドイツ書店協会平和賞を受賞した際、「暴力は絶対だめ!」と演説をしたことでも知られる。子どもへの体罰や虐待は、暴力的な大人や世界、ひいては戦争を生みかねないとして「ノー」を唱えた。
先週、97歳で亡くなった児童文学者の大塚勇三さんは「ピッピ」シリーズの名訳者だった。大塚さんはリンドグレーンについて「子どもの夢や心のうごきをじつによく知っている」と、たたえていた。子どものしたいことや願いを豊かに空想し、そのまま本の中でかなえた、ということだろう。
長くつ下のピッピの世界展」(東京富士美術館・9月24日まで)は連日、親子連れらでにぎわっている。のびのびとしたピッピの姿が改めて人気を呼ぶのだろう。会場では著者の有名な演説の映像も流されている。
夏休みに子どもたちは思う存分遊べただろうか。多少羽目を外しても、それを温かく見守る親の目があってほしい。