辺野古工事 国は真摯な話し合いを - 東京新聞(2018年7月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018073102000137.html
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ついに埋め立て承認の「撤回」だ。沖縄県名護市辺野古への米軍基地建設は重大局面。本当にそこに新たな基地が必要か。政府は法的対抗措置に出るのではなく県側と真摯(しんし)に話し合いをするべきだ。
建設阻止を掲げる翁長雄志知事は、二〇一五年に辺野古沿岸の埋め立て承認を「取り消し」た。これを違法とする国相手の訴訟は最高裁で知事側敗訴が確定したが、今度表明した撤回は取り消しとは意味が違う。
取り消しは、前知事による承認審査に法的な誤りがあったと、いわば身内の手続きを問題にした。
撤回は、その後政府が始めた建設工事に、県との事前の取り決めに対する重大な約束違反が生まれていることを根拠とする。
指摘しているのは、新基地全体の実施設計や環境保全対策が明らかでない点だ。辺野古の海底には、ぐにゃぐにゃの軟弱地盤があることが沖縄防衛局の調査で判明した。そんな場所に、大幅な設計変更もなく基地が造成できるのか。政府側は、そうした地盤の存在を市民団体による情報開示請求まで公にしなかった。自ら不都合を認めているようなものだ。
希少なサンゴの移植も進んでいない。現地では市民の反対運動も続いている。工事が無理に無理を重ねているのは明らかだ。
政府側は十分に県側との協議は行っていると主張。工事を進めていく考えに変わりがないとする。今回の処分には、裁判所への申し立てや訴訟で再び撤回を違法と認めてもらい、工事中断を最短に抑える構えだ。しかし、今度こそは、県民の代表である知事の判断を厳粛に受け止め、今後の聴聞会をはじめとして、県側にきちんと説明することから始めるのが筋ではないか。八月十七日から予定する土砂投入は延期すべきだろう。
前回の訴訟時には一時、政府と県との全面和解が成立。国地方係争処理委員会が、国と県は一から議論し直すべきだと提言したが、政府はまともに取り組まなかった。国策の名の下に、自治を踏みにじってきたのも同然だ。
沖縄では十一月に県知事選、その後には辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票が予定される。必要なのは、強引な埋め立てよりも、将来を見据えた議論である。
翁長氏は会見で、東アジア情勢の変化に触れ「平和を求める大きな流れからも取り残されている」と政府を批判した。仕切り直しは当然だ。