https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-772065.html
http://archive.today/2018.07.31-000346/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-772065.html
被爆体験から73年。高齢化しても悲痛な叫び声を上げ続けている。政府は、貴重な教訓として、その声に耳を傾けるべきだ。
共同通信が全国の被爆者に核兵器禁止条約について尋ねたアンケートで「日本政府は条約に参加すべきだ」と回答した人が8割に達した。米国の「核の傘」の下にあるとして条約に背を向けている政府に対し、被爆者の大半が強い不満を抱いている実態が浮き彫りになった。
そもそもこの条約の根幹をつくったのは被爆者だ。広島、長崎の被爆者らが条約の早期実現を求め、世界規模で署名活動を繰り広げた。息の長い国際的な核廃絶運動の原動力になった。
その結果、核の開発・保有・使用を全面禁止する世界初の画期的な国際法が誕生した。被爆者たちの「核なき世界」への強い思いが、悪魔の兵器を拡散させず、核依存の安全保障政策から脱却したいと願う国際世論をつくり出したのだ。条約実現の推進役となった「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」にはノーベル平和賞が贈られた。
しかし、日本政府は核兵器に依存した安全保障体制を支持し続けている。核廃絶は「非現実的」との認識だ。トランプ米政権が、「核なき世界」を目指したオバマ前政権の方針を大きく転換し、通常兵器やサイバー攻撃を受けた場合の報復や先制攻撃にも核が使えるとした新たな核戦略指針を公表した際も「高く評価する」と肯定した。
唯一の被爆国でありながら、核兵器の存続に加担する姿勢を取ることは、世界の恒久平和を願う被爆者たちの思いを踏みにじるに等しい。
今回の調査の回答には、震える文字や強い筆圧でいくつもの悔しさが記され、政府への深い失望がにじんでいたという。
回答者の6割以上が自身の被爆体験を語っていないことも明らかになった。今なお脳裏に焼き付く惨状に胸を痛め、口をつぐむ人が多く存在する。高齢化も深刻だ。消えゆく生の声をいかに後世に伝えるかは非常に重要な課題である。「思い出すだけで涙が出てくる」「家族にも話したくない」という苦痛の中から紡ぎ出した言葉を、政府は重く受け止めるべきだ。
沖縄にも深い関わりがある。日米は沖縄の施政権返還に合意した際、日本復帰後も有事には米軍が核を持ち込めるとした密約を交わした。米側は今も沖縄への核の再持ち込みを念頭に置いた訓練を実施している。
県議会は今月6日の本会議で、非核三原則の堅持と核兵器持ち込み疑惑の解明を日本政府に求める意見書を全会一致で可決した。戦争など有事の際の核使用に沖縄が巻き込まれる恐れは今も続く。
政府は「核なき世界」を実現することを自らの責務と捉え、核兵器禁止条約に率先して参加すべきだ。