[辺野古で7度目の裁判] 公正で実質的な審理を - 沖縄タイムス(2019年7月18日)

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辺野古新基地建設を巡り、県は17日、国土交通相が埋め立て承認撤回を取り消した裁決は違法だとして、裁決の取り消しを求める訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。
県民投票などで示された民意を無視して工事を強行する国に対する対抗措置である。
今回の提訴は、県が昨年8月、新基地建設に必要な埋め立て承認を撤回したことが発端である。県はマヨネーズ並みといわれる軟弱地盤や活断層が承認後に判明したことを挙げ、サンゴやジュゴン環境保全対策にも問題があるとして、承認を撤回した。
県の撤回に対し、防衛省沖縄防衛局は撤回の取り消しを求め、国交相に審査を申し立てた。国交相は4月、撤回を取り消す裁決を下した。
県は裁決を不服として、国と地方の争いを調停する総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出たが、係争委は6月、国交相の裁決は審査の対象とならないとして却下した。
県の主張は一貫している。国の機関である防衛局が一般国民の権利救済を目的とする行政不服審査法を使って国交相に審査を申し立てるのは違法であること、新基地建設を推進する安倍内閣を構成する防衛局の申し立てを同じ立場の国交相が審査するのは身内同士の判断であり、不公正であることだ。
記者会見した玉城デニー知事は「国交相の裁決は、選手と審判を同じ人物が兼ねているようなもので、自作自演、結論ありきで公正さに欠けている」と厳しく批判した。
国の強引な法解釈が許されるのなら地方自治体の処分が何であれ、国が覆すことができる。対等であるべき国と地方の関係をゆがめるものだ。

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地方自治を守る砦(とりで)といわれる係争委も、両議院の同意を得て、総務相が任命する手続きからして国の都合のよい機関になったようにみえる。
2018年から委員長をはじめとする5人は全員新しくなった。沖縄防衛局が「私人」と同じ立場で承認を受けたとする国交相の判断に「疑問は生じない」と言い切る。
だが係争委が却下の決定をしたからといって、国交相の撤回取り消しの裁決が、適法か違法かの司法判断が出ているわけではない。
多くの行政法学者らが国の手法を「制度の濫用(らんよう)であり、法治国家にもとる」と批判する。それを司法の場で問うのが今回の訴訟である。
一連の訴訟では国寄りの訴訟指揮をしたと受け止められた裁判長もいただけに、三権分立の一翼を担う司法の矜持(きょうじ)をもって公正な審理を尽くさなければならない。

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辺野古を巡る県と国の訴訟は7件目となる。
玉城知事はこの日も毅然(きぜん)として訴訟に踏み切る姿勢をみせる一方で、「政府に対し、司法によらず、対話による解決の必要性と重要性を繰り返している」と訴えた。
訴訟とは別に、玉城知事は引き続き政府との協議の道を探り、工事が進む現状を打開するにはどうすればいいのか、万国津梁会議の知恵も借りたい。政府は対話拒否の姿勢を改めるべきである。