https://mainichi.jp/articles/20180705/ddm/005/070/103000c
http://archive.today/2018.07.05-014501/https://mainichi.jp/articles/20180705/ddm/005/070/103000c
参院「合区」の現職救済を目的とした公職選挙法改正案を自民党が国会に提出し、野党の反対を押し切って成立させようとしている。
改正案は来年の参院選から比例代表定数を「4増」としたうえで、各政党の比例名簿上位に「特定枠」を設けるのが柱だ。
合区となった「鳥取・島根」「徳島・高知」の候補者調整であぶれる現職を救済する狙いがある。
参院選挙区が都道府県単位を基本とする中で、人口の少ない県に限って2県を1選挙区とすることに問題があるという主張は理解できる。
しかし、憲法に基づき投票価値の平等を重視する最高裁の要請を受け、「1票の格差」を是正する暫定措置として合区を導入したはずだ。
その結果、立候補できなくなる現職がいるからといって、比例代表で優先的に当選させるという考え方は筋違いも甚だしい。それでは「裏口入学」だと私たちは言ってきた。
合区を否定するのであれば、1票の格差を是正する抜本的な制度改正に取り組むのが筋だ。来年の参院選までに結論を得ると公選法の付則に定めておいて、その努力を怠り、自分たちでつくった合区制度の骨抜きを図るご都合主義は許されない。
そもそも、あらかじめ政党が比例名簿に順位をつけておく「拘束名簿式」を、候補者の得票順に当選者が決まる「非拘束名簿式」に変更したのも自民党の党利党略だった。
それをまた部分的に拘束名簿式に戻すというのは、合区を骨抜きにすることと併せ、二重の意味で選挙制度をねじ曲げる。民主主義の土俵となる選挙制度を与党の数の力でそこまで私物化してよいはずがない。
野党では国民民主党が1票の格差を最大3倍未満に抑える暫定措置として、議員1人当たりの人口が最も多い埼玉選挙区の定数を2増やし、その代わりに比例定数を2減らす「2増2減」案を主張している。埼玉の2増は自民案にも盛り込まれているが、合区救済が入っていない国民民主案の方がましだと言えよう。
伊達忠一参院議長は野党の仲介要請を拒み、対案を出して法案の審議に入るよう求めた。多数決で自民案が可決されるのを見越したもので、事実上、自民案を後押ししている。三権の長としての見識を疑う。