文科省局長を受託収賄容疑で逮捕 東京地検特捜部 - NHKニュース(2018年7月4日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180704/k10011508451000.html
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文部科学省の局長が、私立大学の支援事業をめぐって東京医科大学に便宜を図る見返りに、受験した自分の子どもを不正に合格させたとして受託収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。
受託収賄の疑いで逮捕されたのは文部科学省科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者(58)で、東京地検特捜部は東京 霞が関文部科学省を捜索しました。
東京 港区の会社役員、谷口浩司容疑者(47)も収賄のほう助の疑いで逮捕されました。
特捜部の調べによりますと、佐野局長は文部科学省の官房長だった去年5月、私立大学の支援事業をめぐって、東京 新宿区にある東京医科大学に便宜を図る見返りに、ことし2月、東京医科大学を受験した自分の子どもを不正に合格させたとして受託収賄の疑いが持たれています。
佐野局長は谷口役員を通じて東京医科大学の関係者と知り合い、この関係者から文部科学省が特色ある研究に対して費用を支援する「私立大学研究ブランディング事業」の対象校に東京医科大学が選定されるよう要請されていたということです。
そして選定に便宜を図る見返りとして、佐野局長の子どもの入学試験の点数がこの関係者らの裁量で加算された疑いがあるということで、特捜部は点数の加算などが賄賂にあたると判断しました。
この事業には昨年度55億円の予算が計上され、188の大学が申請して東京医科大学を含む60校が選定されていました。
特捜部は文部科学省の支援事業の選定をめぐる詳しい経緯について実態解明を進めています。
特捜部は2人の認否を明らかにしていません。
「私立大学研究ブランディング事業」とは
今回、佐野局長が便宜を図るよう求められたとみられる事業は、文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業」と言われるものです。
私立大学への補助事業として平成28年度からスタートし、昨年度は55億円の予算が計上されました。
学長のリーダーシップのもと、特色ある研究を打ち出す私立大学に対して経常費や設備費などを最長5年間支援するのが特徴です。
昨年度は188の大学が申請し、東京医科大学を含む60校が選定されていました。
東京医科大学のホームページにも、去年11月8日付けで手術ロボットの実用化などがこの事業に選定されたことが紹介されています。
佐野局長の略歴
逮捕された文部科学省の佐野太局長は、昭和60年に当時の科学技術庁に入庁し、山梨大学の副学長や文部科学省の会計課長などを歴任しました。
そして、私立大学の支援事業の選定で東京医科大学の関係者から便宜を図るよう依頼された去年5月には、文部科学省の官房長を務めていました。
この官房長の時には、文部科学省は、組織的な天下りが問題となり、当時の前川事務次官が辞任するなど合わせて43人が懲戒処分を受ける前例のない事態となっていました。
その後、去年7月からは科学技術・学術政策局の局長を務めていました。
「有給休暇を取る」と佐野局長から電話
文部科学省科学技術・学術政策局の科学技術・学術総括官によりますと、4日朝、佐野局長本人から「きょうは有給休暇を取る」と秘書に電話があったということです。休みを取る理由については話さなかったということです。
文科相「誠に遺憾 捜査に全面協力」
文部科学大臣は午後5時半ごろ、文部科学省で記者団に対し、「法務省から説明を受けて承知している。現職の職員が逮捕されたことは誠に遺憾であり、文部科学省としては今後、捜査に全面的に協力していく」と述べました。
そのうえで「逮捕されたのが現職の局長なので、任務を遂行することは難しいと思うので、何らかの措置を速やかに取りたい」と述べました。
局長は事務次官が兼任
文部科学省は、佐野太科学技術・学術政策局長が受託収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕されたことを受けて、佐野局長を大臣官房付にしたうえで、科学技術・学術政策局長は当面の間、戸谷一夫事務次官に兼任させると発表しました。
文科省職員「信じられない」「絶対許せない」
文部科学省の科学技術・学術政策局長が逮捕されたことを受けて、文部科学省の男性職員は「立場ある官僚がこのような古典的な事件を起こすなんて信じられません」と話していました。
別の女性職員は「教育をつかさどる省庁に勤めていながら、便宜を図った見返りに大学の入試で自分の子どもを合格させてもらうなんて絶対に許せません。情けないです」と話していました。
東京医科大とは
東京医科大学は東京 新宿区にある私立大学で、おととし創立100周年を迎えました。
大学のホームページによりますと、学部は医学部1つだけで、その中に医学科と看護学科があります。
また、東京 西新宿には大学病院が、東京 八王子市と茨城県阿見町には医療センターがあります。
ことし5月1日現在、学生数は医学科が6学年合わせて748人、看護学科が4学年合わせて379人となっています。
ことしの医学部医学科の一般入試では、受験者数3535人に対し、合格者数は214人、推薦入試では受験者数142人に対し、合格者数は27人となっています。
東京医科大学「厳粛に受け止め 捜査に全面協力
東京医科大学は「皆様に多大なご迷惑、ご心配をおかけしていることに深くおわびを申し上げます。東京地検による捜査を受けていることは事実であり、厳粛に受け止めております。大学として捜査に全面的に協力しているところです」というコメントをだしました。
東京医大の学生「受け入れた学校も問題」
東京医科大学の前では学生たちから憤りの声が聞かれました。
2年生の男子学生は「正しい方法で入学した学生に失礼です。医者という職業を考えても本当にあってはならないことだと思います。局長には重く受け止めて責任を取ってもらいたいです」と話していました。
4年生の女子学生は「国の組織のトップにいる人がこのようなことをするのは信じられません。私たちはきちんと勉強して入学しているのに、いくら自分の子どものためとはいえ、不公平だと思います。受け入れた学校側にも大きな問題があると思います」と話していました。