参院議員の歳費 小手先の対応で繕うな - 信濃毎日新聞(2019年5月18日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190518/KT190517ETI090017000.php
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参院議員の歳費 小手先の対応で繕うな
難をかわせると思っているのだろうか。
参院議員が歳費の一部を自主返納するかどうかで、与野党の協議が続いている。
定数が6増え、今夏の参院選でまず3増となる。この3人分の議員経費を当面の自主返納で賄うという。
国民の理解を得たいのなら、小手先の対応は通用しない。衆院を含めて両院の役割や権限を根本から見直し、適切な定数と歳費のあり方を探らねばならない。
最高裁は「1票の格差」が最大4・77倍になった2013年の参院選違憲状態と判断した。国会は公選法を改正し、16年の改選で「鳥取・島根」「徳島・高知」を統合して一つの選挙区とする「合区」を導入した。
格差は縮まったものの、選挙区を削られた地域の不満は強い。そこで自民党が持ち出したのが、6増案だった。
議員1人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区を2増し、比例代表を4増とした。比例には「特定枠」として部分的に拘束名簿式を復活させている。合区で立候補できない現職を救うための我田引水策を、自民は他党の反対を押し切って成立させた。
国民に経費の負担を求めるのは体裁が悪かったのだろう。自民、公明両党は2月、3年間に限り参院議員の歳費を月7万7千円減額する法案を提出した。
定数増を批判してきた野党側は反発。国民民主党が代わりに自主返納を提案すると、自公もあっさり同調に転じている。
東日本大震災後、復興財源として歳費を削った期間も2年半だけだった。期末手当と合わせると衆参議員の年間報酬は2千万円余と高額だ。本気で「身を切る」覚悟があるとは思えない。
1票の格差を巡っては、その場しのぎの是正策が繰り返されている。憲法が保障する「法の下の平等」には遠く、国政選挙の度に無効を求める訴訟が起きている。
地方は逆に、参院都道府県代表制とするよう求めている。
大臣や政務官を出さない、男女の割合を半々と規定する、権限を抑制する―。識者からは多様な参院改革案が出ている。ふさわしい定数を見いだすためにも、衆院との機能の違いを明確にする議論こそ煮詰めるべきだ。
公設秘書の手当、交通費、郵便代などを加えると、議員1人の年間経費は7千万円以上になる。身を切ると言うのなら、聖域を設けずに、衆院と合わせて本格的に取り組んでもらいたい。