「残業月100時間未満」「同一賃金」 政府が計画決定 - 東京新聞(2017年3月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017032902000116.html
http://archive.is/2017.03.29-002427/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017032902000116.html


政府は二十八日、働き方改革実現会議を首相官邸で開き、罰則付きの長時間労働規制や非正規労働者の待遇改善などの具体策を盛り込んだ改革の実行計画をまとめた。残業の上限を「月百時間未満」と明記した。現行では残業規制の対象外になっている運輸業や建設業は、改正法施行から五年間規制を見送る。正社員と非正規労働者の賃金に差をつける場合は企業に説明責任を課す。厚生労働省審議会の審査を経て秋の臨時国会にも関連法案を提出、二〇一九年度施行を目指す。
残業時間の上限規制は、月四十五時間、年間三百六十時間の基本的な規制を法定化。年間上限を七百二十時間(月平均六十時間)と決めた。月四十五時間超の残業は半年間まで認め、年間七百二十時間以内ならば、繁忙期などは「月百時間未満」や、「二〜六カ月の月平均八十時間以内」の残業も特例として認める。
トラック、バス、タクシーなど運輸業と建設業は、この上限規制を五年間猶予する。運輸業は猶予後、年間九百六十時間(月平均八十時間)に上限を緩めて適用する。将来的には他業種と同じ年間七百二十時間まで規制を強めることを目指す。建設業は猶予後、年間七百二十時間の上限を適用するが、災害など復旧・復興事業に関しては、上限の特例は適用しない。

働き方改革は途上
政府の働き方改革実現会議が二十八日、実行計画をまとめた。過労死を防ぎ、子育て・介護と両立しながら女性や高齢者も働ける環境整備に一定の「処方せん」を示した。少子高齢化が進む中、政府は働き方改革を経済再生に向けた「最大の挑戦」に位置付けるが、実現には課題も多い。 (鈴木穣、中根政人)



安倍晋三首相は会議の席上「日本の働き方改革にとって歴史的な一歩だ」と自賛した。残業規制に実質的な上限規制を設けるのは一九四七年の労働基準法労基法)制定以降初めて。しかし、取り残された業種がある。現在は残業時間規制の対象外になっている運輸、建設業の適用は改正法施行から五年間猶予する。
インターネット通販などの急増で、宅配便最大手のヤマト運輸をはじめ運輸業長時間労働が問題になる中、政府が企業の労働環境改善の取り組みを十分に後押しできない恐れがある。建設業に関しても、政府は二〇二〇年東京五輪パラリンピックの需要増を優先させた形だ。
計画には、働く時間ではなく成果に賃金を支払う「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)を含む労基法改正案の早期成立が盛り込まれた。今回、研究開発は規制の適用除外のままとなったが、業務によっては同制度の対象となり過重労働の懸念も残る。
残業の上限規制の甘さに対しても、過労死遺族や労組から反発が相次いだ。特に特例の「月百時間」の上限に対しては、連合の神津里季生会長も「到底ありえない」と批判したが結局、経団連に押し切られた。
さらに残業規制には、休日労働は含まれていない。制度上は年間上限七百二十時間の残業に加え、休日労働も可能となる。日本労働弁護団常任幹事の菅俊治弁護士は「残業は『例外』のはずだが、年七百二十時間の規制も緩いのにさらに休日もとなると労働時間の削減からはほど遠い」と話す。
ヤマト運輸では残業代未払いも表面化した。規制強化で残業の「過少申告」などサービス残業が横行する恐れがある。現場の取り締まりが重要だが、労働基準監督官は約三千二百人。労働者数に占める監督官数は欧州各国より少ない。政府の規制改革推進会議は、社会保険労務士の活用に向け検討を始めたばかりだ。